恋は計算通り、君は想定外

 
 「ちょっと付き合って!」
 「おい」
 腕を掴まれて引っ張られる。行先は緑の看板のコーヒーショップ。前にも同じような事があったが、まさかな。
 「じゃあ、私は‥‥コーヒーのベンティ‥‥あと、ケーキはこの辺からこの辺、全部!‥‥店内で食べていくから」
 「え?」
 俺と一緒に店員も驚く。
 「そちらの‥‥お客様は‥‥?」
 「じゃあ‥‥ホットコーヒー‥‥小さい奴で」
 「お会計は?」
 聞かれて陽奈はニヤと笑った。
 「彼が払いますから」
 「‥‥‥‥」
 払わないと無銭飲食になってしまう。納得はいかないが、俺はサイフを開く。札が一気に数枚飛んでしまった。
 「‥‥‥‥どういうつもりなんだ?」
 「借りができちゃったって事で」
 「‥‥‥‥」
 「この借りは、悠太が水沢さんと付き合うまで返せればいいなって思ってるけど‥‥どう?」
 「‥‥‥‥まったく」
 どういうつもりか分からないが、こうなったら陽奈に協力してもらわなければ、割に合わない。
 「なら、これからきっちり動いてもらうからな」
 「りょぉーかい!」
 陽奈は手を上げて大袈裟に敬礼をした。
 「‥‥‥‥」
 俺は窓に顔を向け、日が落ちてオレンジ色に染まりつつある通りを見つめる。
 いろいろあったが、スタート地点に戻っただけだ。ヒロインと主人公の物語はまだ始まっていない。
 これからどんな展開になっていくのか‥‥それは具体的には何も分からない状態だが、どんな危機でもヒロインのピンチには駆けつけ、乗り越える事が出来る事は疑いようがない。
 
 俺は物語の主人公なんだから