診察は始まっていて
中に患者さんがいっぱい待合室で待っている

俺はすぐ荷物を置いて白衣をきて
空いてる診察室で診察を始めた

8割は発熱患者で
その中でもほとんどインフル
今年は流行が半端ないらしい

診察して検査して処方箋出してを
繰り返して何時間経ったかもわからない


「恭介先生、午前、最後の患者さんです
お願いします」

今日ついていた看護師さんに言われて
患者さんが診察室に入ってきた
問診票をみたら発熱での来院

若い女性だった

「お待たせしました
症状は熱だけですか?」

「熱と咳、鼻水です」

相当しんどいのか俯きながら答える
顔もみせてもらえない

「熱はいつから出ましたか?」

「昨日の朝からです」

「じゃあ24時間経ってますね
インフルの検査させてください。」

この会話は今日何回目かわからないくらいで看護師さんたちもすぐに検査の準備をして持ってきてくれる

「その前に服の上からでいいので胸の音聞かせてください」

「...はい」

服の上から聴診器を当てて心音をきく
ちょこっと心拍は早いけど心音は問題なし

それよりさっきからずっとお腹を抑えてるのが気になる

「腹痛もありますか?」

「...いえ」

初診の患者さんでカルテをみても既往歴としてなにも書いていない

「本当に風邪症状以外ないですか?」

「...」

俯いて何も答えてくれなくなった
なんか隠してるんだろうな

「とりあえずインフルエンザの検査しますね」

「あの...」

手を震わせながら聞いてきた

「はい」

「...みなしでインフルエンザの診断書かいていただけないですか?」

「心当たりあるんですか?」

「...はい、学校の同級生に」

「んー」

「実習があって休むのに診断書が必要なんですけどみなし陽性で書いていただきたいんです...」

コロナが流行してからみなし陽性で診断書書くこともあるけどなるべく検査はするようにしているが親父の病院だし融通きかせてあげることもできる

「隠してる症状全て教えてくれたら考えます」

お腹を抑えてる理由が気になる
医者として見逃すわけにはいかない
ただ女の子の日で痛いとか病的ではない痛みであれば安心して帰せるんだけどなぁ

俺の回答に顔を上げて睨まれた
初めて顔をしっかり見たが顔色が悪い
インフルのせいなのかそれ以外が原因かわからないが体調は悪そう

「お腹痛いんですよね?」

「...はい」

「いつからですか?」

「1ヶ月前くらい?」

「お腹下したりはないですか?」

「...」

反応的にある。

「検査した方が...」

「大丈夫です
症状教えました、みなし陽性で診断書お願いします」

「...わかりました
ただ熱が治って体調よくなったら別の病院でもいいので消化器でみてもらってください」

「...はい」

「約束できますか?」

「...はい」

「では診断書かくので少し待合室でお待ちください」

荷物をそそくさとまとめて急いで診察室を出た

「お大事に」

診察が終わりほっと息をついた
あとは診断書を書くだけ
パソコンに向き合ったが
やっぱり顔色が悪いのが気になる