◎恭介◎
《お疲れ様
そんで次はいつ来んの?》
1時間ほど時間をおいて連絡したが返ってこない...
結局その日は連絡こなくて朝になった
...プルルル
『ただいまおかけになった番号は...』
電源が切られてる
このまま逃げられるわけにはいかない
お腹がまた痛くなる
今日も4西って言ってたから少し覗きにいくか
朝、出勤してカルテに一通り目を通して回診に回った
消化器の病棟にも学生さんがきてて実習をしている
きっとあいつもいるはず
少し時間がある時に
4階に降りて4西の病棟をのぞいた
「おい」
ナースステーションでカルテを見ながら情報収集している神田 あやはに声をかけた
「...」
「お前連絡返せ、次の診察の約束...」
「ちょっときて」
周りを見渡して慌てた様子でナースステーションを出て非常階段に向かった
「大きい声でそんな話しないで」
「連絡返せばここまで追ってきてない」
「今週は忙しいの
来週からは実習もここじゃなくなる」
「だから?」
「私のことほっといて」
「約束が違うなぁ」
「...」
「来週から違う病院での実習になったら
もっと治療から逃げるだろうな」
「...」
「図星か」
「もう戻らないと...今日終わったら連絡するから」
「無理、戻さない」
目を見たらわかる
治療に前向きじゃない
実習で忙しいのはわかるけど
自分の体調おろそかにするのは許さない
「終わったら連絡するから」
「連絡じゃなくて俺に会いにこい
そこらへんの看護師つかまえて俺を呼んでもらえ」
「ねぇ正直に話したら見逃してくれる?」
「なに?」
「本当に体力が落ちててお腹痛い時も増えて実習についていけてない」
「病気のせいだろ?」
「わからない、でも何が理由でも単位落とすわけにはいかない
帰って記録もある明日の計画も立てないといけない
だから今週は金森先生にあってる時間もないし話したくない」
「じゃ実習辞めちまえ」
「だからそれは...」
「俺から言っとく
ドクターストップだって」
正直に言ってきたのはまだ成長した
だけど治療と実習の両立ができないなら
もちろん医者として命を救う選択肢しかない
とりあえず学校の先生、看護部長、病棟の師長、指導者、みんなに話をして辞めさせる
...プルルル
「金森です。実習生で神田...」
まずは看護部長に電話をした
「ねぇ」
「神田 あやはって子が4西に....」
「わかった、今日終わったら会いにいく
だから言わないで。お願い」
どうせ口だけでまたすぐ
忙しいとか理由をつけて俺を避ける
このタイミングで実習ストップさせる
「4西の神田 あやはさん、持病でドクターストップかけます」
「許さない」
町田かなは俺の前から去ろうと非常階段の扉を開けた
「待てお前に戻るところはない
今日から実習おわり」
「だから帰んの、離せばーか」
ばか?
生まれて初めてそんなこと言われた
「話が終わってねぇ」
「私はもう話すことない
実習を予定通りさせてくれるなら治療するって約束したけどそれを破綻させたのはそっちだから」
「俺はチャンスあげたろ」
「だから昨日行ったでしょ
診察も受けた
次の日程決めてないだけで会いたくないとは言ったけど実際に約束は破ってない
週2の約束だって昨日したのに何を破ったの?
ほんとありえない、許さない、きっしよ」
走って俺の前から消えた
その後、実習を戻らず本当に帰ったみたい
俺も病棟に戻って業務を進めてる間
あいつが言ったことが頭から離れない
確かに約束は破ってない...か。
俺が急ぎすぎたか?
その場で電話をしてしまったのは
やりすぎてしまった気がする
反省して謝りたくて
休憩や空いた時間に電話するが
着信拒否されてるのか繋がらない



