弱さを知る強さ

「神田さん実は今すぐにでも...」

「待って、ごめんなさい、でも言わないで」

エレベーターホールで先生と生徒たちに話そうとしたら顔をあげて俺を見て腕を引っ張られた

「きのう、俺なんて言った?」

「だからごめんなさい。謝ってる」

「謝って済む問題じゃない
この子今すぐにでもオペ...」

「やめて」

大声で叫んだ
いつもボソボソとしか話さないから
こんな大きい声が出るのびっくりした

「金森先生、2人で話したい」

懇願したように俺の腕を引っ張りながら言ってきた

先生や他の生徒もびっくりしていた

「じゃあ答えろ俺は昨日なんて言った?」

「...だって休むと単位が...」

「だから明日だけは休めって昨日ゆったろ
毎日行くなとは言ってない」

「...」

「それも出来ないなら先生に話して
行っても帰らしてもらうようするしかないだろ」

「ごめんなさい。ちゃんと次から言うこと聞くから。許して」

「死んだら次はないぞ」

「...あの...神田さんどうかしましたか?
なんか先生の失礼になるようなこと...」

「いや、俺がこの子の病気みてます」

「えっ」

「昨日...」

「ねぇってば!!!」

「うるさい、いいから黙ってろ
約束守れないやつにどうこう言う資格はない」

「病気って?」

先生が驚いたように聞いた

「まだしっかり診断はつけてませんが腹痛があって
昨日、非常階段で動けなくなりました
今日も念の為休むように言ったんですがだめでした。」

「そうなんですか。気づかずすみません。」

「いえ、本人も隠してるので」

もう諦めたのか黙って俺らの会話を聞いていた

「俺は今すぐにでもオペをするべきだと考えてます。ただ看護学生ってこともあって実習や国試があることも理解しています。本人とよく話し合って今後のことを決めて行こうと思ってます」

「そうですか...」

「でもこうやって約束を守れないようだと実習も国試も諦めて今すぐオペに踏み込んで欲しい」

「...」

神田あやはの方をみると俺を睨んでる

「ちょっと俺も本人の意思を尊重するかどうか
悩んでます。隠れて見つからなければいい。そう言う考えを持っている以上、協力する気もない。」

「...だからごめんって言ってる」

「口だけなら誰でも言えるだろ行動に移せ」

「...」

「神田さん今日は実習、帰ってもいいよ」

先生が心配そうに話し始めた

「...」

「治療優先だよ」 

「じゃ先生は治療優先して実習休んだり国試受けれなかったら責任とってくれますか?」

「いや...」

「それなら無責任なこと言わないでください。
私は今年、実習して絶対に単位とって来年には国試にも受かりたいんです」

「それはわかるけど...」

「ほっといてください」

俺じゃなく先生にもこんな言い方するんだ
確かに俺が医学生の時、オペ必要って言われたら考えるなぁ。本気なのは伝わるんだが...

「ほっといたら死ぬよ?」

黙っていられず少し横から声をかけた

「いいよ、別に」

「死んだら看護師なれないよ
命をつなげて来年また頑張れば...」

「だから私に来年はないの。
私のことなんも知らないのにでしゃばってこないで」

大声で叫んだあと
階段に向かって走っていった

今この興奮状態で走ると危ない

「まて!走るな!」

階段を降りた神田あやはを急いで追いかけた

3階と2階の間の踊り場で腕を掴んで捕まえた

「ストップ、わかったからもう走るな、危ない」

その場に座り込んだ

「...はぁ...はぁ...はぁ
お腹が...痛い」

...プルルル

「金森です、エレベーター横の階段2階と3階の踊り場まで担架持ってきてください。4階の処置室に運ぶので痛み止めの点滴の準備も一緒にお願いします。

応援呼んだから点滴打てばすぐ楽になると思うから」

「...痛い」

「痛いなぁ、大丈夫だから落ち着いて呼吸して」

すぐに応援がきてすぐにそのまま担架で処置室に運んだ

「血液検査する、一瞬で終わるから」

「無理、やめて」

「お願い」

「無理」

急いで身体を起こして逃げようとする

少し顔色は良くなったがまだ痛みはあるだろう

「わかった、少し休め、俺が迎えに来るまでここにいろ」

そこまで拒否されたら
無理やりやるより待った方がいいと考えた

起こした身体をもう一度寝かした

「...」

心配だったが少し仕事に戻った