「...んん」

「起きたか?」

気づけば夕方6時すぎ
かれこれ3時間ほど寝てた
  
「...今何時?」

「6時過ぎ」

「帰らないと...
明日も実習だから記録しないと」

「さっき、こないだのエコーの結果みたけどかなり早急に治療をしないといけないと思う」

「...」

普通は驚くはずなのに
すんなり受け入れてる気がした

「ある程度調べてわかっていたか?」

「...」

「できるなら手術した方がいい」

今度は驚いたように
俺の顔をみた

「無理だよ、実習あるし国試もあるし」

「でも死んだら看護師なっても意味ないだろ」

「え、死ぬの?」

「このまま放置してたら死ぬ」

「...」

医者としては病気を優先して
治療に専念して欲しい
でも学生の立場からしたら
国試受かって卒業しておきたいのもわかる。

「少し考えさせて」

俯いたままだったが声がこもっていた
涙を我慢してるようだった
今までは威勢よく反抗してたが
その様子もなく肩を落としていた

「今日激しい腹痛がおきたところだし明日は実習休んで。
明後日からは行ってもいいけど終わった後、俺に声かけるか連絡して。
少し診察してから帰ってもらう」

今すぐにでも入院して色々検査してオペに進みたいところだが
すんなり受け入れることなんか19歳そこらの子は無理だろうと判断し少し時間を与えることにした

「...」

「それ破ったら速攻、先生にも指導者にもいまの状態説明してすぐ実習中止させる」

「...なんで」

「インフル治ってすぐ治療受けてたら薬でなんとかできたかもしれないな」

「...薬でなんとかして欲しい」

「手術適応だって言ってるだろ」

「...」

「明日は休め、明後日からは実習終わったらそのまま俺に見せに来い、わかったか?」

「...はい」

「よし、じゃあ送ろうか?」

「大丈夫です。1人で帰ります。」

「家に誰かいるのか?」

「大丈夫です。」

「質問の答えになってない
今日病院泊まって行ってもいいよ
ベッド空いてるし」

「明日、7東にも実習生くるでしょ。
ばれちゃうよ」

「そうなのか?しらねぇ。」

「大丈夫、帰れるから」

「帰ってから体調悪くなったら誰か助けてくれる人いるのか?」

「いないよ。けど病院くれば金森先生がいるでしょ」

「俺だって家に帰るよ」

「...そう...だよね。」

俺を頼ってくれているのか
いいように使われているのかわからないが
少し心を開いてくれた気がして嬉しかった

「一緒に帰ろう、送って行くから」

「会計は?」

「今日はいい」

「えっ」

「とりあえず帰ろう」

処置室を出て職員出入口に向かった

「ここでまってて
車持ってくるから」

「いいよ、1人でタクシーで帰れるから」

「お前、今俺のいうこと聞かないって
どういうことかわかってるだろうな?」

「...」

「実習したいなら言うこと聞け」

「...わかったから」

実習を囮に言うことをきかせて
とりあえず病気の状態をみる
これからの予定を立てていかないと
あまり時間もない

薬でなんとか誤魔化せたらいいけど
そんな長くは持たない

いずれはオペをしないといけない
どのタイミングで踏み込むか
まずしっかり検査や治療をしてくれるようになるにはどうしたらいいか
考えながら車を回した

「お待たせ、乗って」

「お邪魔します」

「家どこ?」

「金森クリニックにおろしてもらえれば...」

「家どこ?」

「...」

「明日、先生に言うからな」

「もう...」

「ははっ、うそうそ
住所教えろ、家の前まで送るから」

結局、住所を聞いて
家の前まで送った

小さなマンション

「明日はゆっくり休め
なんかあったら連絡して」

「...」

フル無視で去って行った

初めてあった頃よりは会話ができるようになった

少しずつだけど進めている気がする