転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「悪かった」

 オリヴィアの腕の中にいるトラの肩をポンとやる。……サラサラだな。しっかりとブラッシングされている。サラサラであったかい。ドレスのデザインも前と少し違う。肩出しで動きやすいドレスだ。オリヴィアが手配したんだろう。

「悪かったよ。調子に乗った」

 サラサラよしよしサラサラよしよし。

「鬱陶しいにゃん!」

 ペシッとはたかれた。

「とにかくにゃん。にゃーはせっかくだから、これから起こる悲しいことは、防げるのは全部防ぎたいにゃん。生徒のおかしな行為も止めたいにゃん。止められるのかが、知りたいにゃん」

 あー……なるほど。確かに魔法の杖での競争はトラのお陰で防がれた。

 共通ルートを思い出すと……生徒のおかしな行為は残り二つ。悲しいイベントで止められる可能性があるのはベル子の問題だな。

 止められないのは、顧問が見守っているまだ登場していないあの女の子の件か。

 ……泣きゲーだからな。

 リュークとルリアンが結ばれなかったら、どうなるんだろう。もしかしたらトラは……たとえ小さな出来事でも未来が変わると信じられたなら、あの子の運命だって変えられる――そんな希望を持ちたいのかもしれない。

「えーと、生徒のおふざけ行為は『変顔選手権。おかしな魔法行為で顔が固定化』と『ロシアンルーレットお団子事件。あわや大惨事』だな。ま、ロシアンルーレットじゃなくて運命の選択って名前だったが」
「酷い事件にゃん。にゃーがその二つは止めるにゃん」
「……任せていいのか?」
「基本的に頭のいい生徒ばかりにゃん。注意のビラを配ればきっと大丈夫にゃん」
「分かった、頼む」
「がってんしょーちのすけにゃん!」

 お前、絶対日本人だろ。

「ベル子にゃんのことはニコラ王子に任せるにゃん」
「あ、ああ」
「今のニコラ王子なら大丈夫だと思うにゃん」
「えっ。もしかして俺に惚れた? 悪いけどラビッツを愛してるし、猫に発情はしないぞ」
「にゃーもしないにゃん! やっぱり頼りにならないにゃん!」
「ははっ。ま、あんまり期待しないでくれ」
「ほんとに期待しないでおくにゃん」

 プレッシャーには弱いからなー、俺。

「じゃ、台車に乗ろーぜ!」
「「乗らないわ」」

 なんでそこだけ気が合ってるんだよ。