転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 ん?
 あれは? リュークの背後からすごい勢いで向かってくるあれは?

「はわわぁ〜、遅刻遅刻ぅ〜!」

 気づいていないリュークは前方の花壇をよけるように大きく右へずれた。俺はブロックに飛び移る。

 リュークにだけ激突だ。

「ぐえっ」

 やはり来たか……メインヒロインのルリアンだ。

「はわわわ。だ、大丈夫ですかぁ〜?」

 薄い金髪でふわっふわの肩までの髪に、ピンクのリボンをつけた青い瞳のヒロインだ。ゲーム通り、リュークは体当たりをされてずっこけている。

「いてぇ……」
「リューク、お前騎士のくせになんで攻撃を食らってんだよ」
「後ろから不意打ちを食らうとは思わねーだろ!」

 普段ならよけられたと思うが、そこはゲームの強制力か。まさにゲーム通りのヒロインとリュークの会話が始まる。

「ごめんなさい。あの、でも、私急ぐので! 行きますね!」
「おい、まだ入学式まで時間はあるぞ」
「私、挨拶をしないといけなくて。実はちょっとした打ち合わせがあるんです」
「は?」
「首席さんなんですよ、私。ルリアン・ウィービングと申します。ルリルリって呼んでもいいですよ」
「呼ばねーよ」
「あは、残念。では行きますね!」

 きたー! 同じく、オープニング曲でのキャラ紹介にもあった台詞!

『ルリルリって呼んでもいいですよ』

 きましたよ、コレ。
 ああ、俺――本当にあのゲームの中にいるんだな……!

「ニコラ、お前だけ避けやがったな。ルリアンだっけか、首席だってな。お前、あれに負けたんだな」

 リュークがもう小さくなったルリアンの背中を親指で指しながら、やれやれとため息をついた。
 
「うるせーよ!」

 王子だから首席狙いでめちゃくちゃ勉強させられた。ゲームでもルリアンに首席をとられていたから無理だろうと思ったけど、周囲が期待するから頑張った。

 そして、駄目だった。

 ゲームの強制力には抗えない。少し挫折した。これからも定期テストでルリアンは一位をとり続ける。厳しいことは分かっている。

 でも、いつか勝とうと思う。

 ゲームの俺と今の俺は違うんだから、可能性はあるはずだ。もし勝てたら、ラビッツも見直してくれるかもしれないしな。才能は前世よりあるわけだし。

 よぉし!
 転生デビューの始まりだ!

 他の攻略キャラの印象的な数々の台詞は、主人公と女の子が二人きりの時だったから俺は聞けないな……と思いながら、ホールへとまた足を踏み出した。