転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「それも分かる。今回の件は記録はするけど先生への報告は控えておくよ」
「……!!!」

 同じことが繰り返されないよう、きちんと釘も刺さないとな。見逃すだけじゃ、意味がない。

「次に危険行為をしたら、今回の分も合わせて報告するけどね。杖も魔法も使う気はなかったんだろう? それなら穏便に済ませるよ。もっとも、猫に注意を受けるまではそうではなかったようだけど。猫の注意で一応、踏み止まったわけだ。じゃ、今から全員の名前を言うよ。違っていたら教えてくれ」

 そう言って、入学前に覚えさせられた名前を画像を思い出しながらスラスラとそらんじてみせる。全員が戦慄した。

 天才に見えるんだろうな……努力のあとなんて他人からは見えない。

 こういうのも慣れてきたな。ただ、王子という身分がなければ、ここまで俺の言葉に耳を傾けてはもらえない。それは自覚しておかないとな。

「今回の件は何も言わない……が、一つだけ教えてほしい」
「は、はい」
「さっき、ベルジェ嬢を見て誰かが『あの人の妹か』と言ったはずだ。彼女が『あの人の妹』であることは有名な話なのか?」

 何人かの顔が曇った。

「剣術科でその……」

 言葉が濁る。ベル子の姉も剣術科だ。おそらく、演習場での先輩の実技見学の際に、ゲームでのあのやり取りがあったのだろう。

『どのツラ下げてこの国に戻ってきたの? クリストフ家にあなたの居場所なんてないのに』

 と姉に言われ、リュークが『俺の大事な友人を傷つけることは許さない』と庇う。

 ――そんなやり取りが。

「事情は大体分かったよ。同じパトロール隊である彼女は大切なメンバーだ。君たちも気にかけてやってほしい」
「分かりました」
「倉庫の鍵を貸してくれ。台車は彼らと一緒に吹っ飛んだからね。怪我の具合を見ながら、台車も戻しておく。壊れていたら今回の件について説明せざるを得ないけど、大事にはしないよ」
「はい! ありがとうございます」

 彼らは視線を交わしながら、俺の前に並んだ。一人が意を決したように頭を下げると、他の生徒たちも続いた。
 
 なんだなんだ!?

「怒られる覚悟はできました。今からしっかりと先生方にも謝ってきます」

 なに!?
 ど、どうする!?

 ゲームでの俺はリュークで、今回と同じように怪我人がいないか見に行ったからな。こっち側は知らないんだよな。うーん。