転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「オリヴィア嬢、昨日はありがとな」
「いいえ。これ、読んだから返すわ」

 昼休憩中にオリヴィアに渡した、スタッフから借りた事の顛末書だ。俺が書いた報告書と内容も大差ない。誰がなんの効果をつけたかまで書いてあるので、他の生徒の目に触れないように「極秘事項だ」と言って渡したから、そそくさと鞄にしまっていた。

 一応、生徒名も全員知っていたほうがいい。このパトロール隊自体を逆恨みする可能性もあるからな……。

「昨日は俺、大活躍だったんだよ。みんなも見なよ。俺様の勇姿をとくと味わうといいさ」

 発見者として名前が書いてあるだけだけどな。

「相変わらず偉そうにゃんね」
「偉いんだよ!」

 このメンバーならもう緊張はしない。遠慮なく調子にのれるってものだ。

 それにしても、トラは完全にオリヴィアに懐いてるな。波長でも合うのか?

「じゃ、私はもう行くわ」
「あー、待ってくれ。昨日の生徒が言ってたんだ。近々面白い企みがあるってさ」
「企み?」
「他愛もない遊びだ。その日になればペンデュラムも振れると思うけど、一応伝えておく。見回りに行くことになるはずだ」
「分かったわ。内容は」

 こうして、その日はラビッツがせっせとパトロール隊記録を書くのを見ながら過ごした。せっかくだからこれまでの皆の感想も別のノートに書きましょうという流れになって、なぜか誰もが好き放題書けるパトロール隊員日記まで作られた。その年の会長――おそらく卒業するまでルリアンの所有物、ということに決まり、卒業までここに置かれることになった。

 ゲームではそんな些細な細かいやり取りなんて書かれない。仲間と一緒に笑って過ごして、楽しい日々が続いていく。

 ――こんな毎日を、過ごしてみたかったんだよな、俺は。

 始まったばかりなのに、これからの楽しい生活の予感に胸が躍る。

 この世界は泣きゲーが舞台だ。
 それぞれのベストエンドは夏で終わる。そのあとに後日談が少しだけ描かれる。そして、ゲームでは全員を攻略するとアナザーストーリーが解放される。

 ここはゲームではない。
 全員を攻略なんてできない。

 どんな未来が待ち受けるのかは――まだ、分からない。

 学園生活は、始まったばかりなんだ。