転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 放課後に旧校舎の隊員室に入ると、机の上の真新しいファイルが目に入った。

「あれ。初めて見るな」
「はい、ベル子ちゃんが綺麗にまとめくれました」

 ……呼び方がちゃん付けになったな。

 ファイルの背表紙には「学園パトロール隊記録」と書いてあり、中には茶トラ猫のトラについての内容が綴じられている。突然現れて仲間になった、という程度で他の人に知られるとまずいことは書いていなさそうだ。

「綺麗な字だね」
「勉強したから。誤字もないと……思う」

 ファイルの存在はゲームでは出てこない。この世界の住人になっているんだなと、あらためて思う。

「それから、昨年までのは棚に入っていますが、生徒名が黒塗りされているのもあります。聞きたければ先生に確認する必要があるそうです」
「……なるほど」

 学生時代の黒歴史をこれから先のパトロール隊に知られるわけだしな。この学園には貴族や富裕層ばかり。時期を見て先生判断で黒塗りされるわけだ。卒業した生徒から塗られているのかもしれない。

 さて。正直、こんな丁寧な記録のあとに俺のを差し込みたくない。

「昨日のも入れとくか、ラビッツ」
「そうね。そっちは私が書くわよ」

 やったぜ。

「ありがとな。職員に渡した報告書の下書きを持っている。下書きだからかなり雑だけど、参考にしてくれ。スタッフから借りた昨日の記録もある。そっちは昼にオリヴィア嬢に貸したから、戻ってきたら一度見せるよ。また職員に返さないといけないんだ」
「あ……分かったわ」
「そういえば、朝に生徒さんが謝っていましたね。昨日のことは少しラビさんから聞きました。また次のお仕事もあるんですよね」
「あ、ああ。伝えるのはここに全員集まってからのがいいかなと思ってさ。一応もう一度、昨日のことから話すよ」

 リュークはまだ来ていない。オリヴィアは来ない可能性もあるかなと思ってアレを貸したんだよな。

 ――ギギィ。

「失礼するわ」
「お、皆集まってるな」

 リュークとオリヴィアだ。彼女の腕の中にはトラもいる。メンバーは全員集合したな。よかったよかった。