転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「あー……疲れた疲れた疲れたー……」

 部屋の隅にはソファと机が置かれた小さなスペースがあったので、そこにドカッと腰を下ろして天井を見上げる。ラビッツも向かいの席に座った。

「お疲れ様。ごめん、私のせいで。私が付き合わせたから……」

 俺相手にしおらしくなってる!?
 そんなに責任を感じさせてしまったのか。フォローしないと。

「校舎をぶらついていなかったら見つけられなかったわけだしな。ラビッツのお手柄だ。誘ってくれてよかったよ」
「う、うん……」

 しかし、本当に疲れた。俺の対応はあれでよかったのかと今さらながら思い出して不安になってくる。普通は隊員になったばかりの新人なら慣れた先輩を呼びに行くところだろうが……ゲームの強制力で総入れ替えだからな。

 もう終わってしまったことだし、違うことを考えよう。

 楽しそうだよな……闇鍋ならぬ、闇水。

「ラビッツは闇鍋って、したことあるのか?」
「……前世で、中学の時に一度だけ」

 リア充だったのか!

「どうだった?」
「グミを入れると悲惨なことになる、と学んだわ」
「……グミ……」
「あまりのまずさに、グミを入れたあとは皆食べられなくなって――、あ! 私じゃないのよ! 私はポッキーを割って入れただけ!」

 ポッキー……。

 友人はいたものの、休日に闇鍋をやろうと誘い合うような仲間はいなかった。クラスメイトの陽キャ連中も、経験があったのだろうか。

「いいな……」
「え、ポッキーが?」
「いや、俺は陰キャだったからさ」

 すっと立ち上がる。
 暗い気分になりそうだったので、例の紙コップが並ぶ机の前まで移動した。

「もしかして飲む気じゃ……」
「報告のネタにもなるしな。少し味見するくらいなら大丈夫だろう」

 楽しそうだし。
 黒子もハラハラしているかもしれないが、これくらいなら大めに見てくれるだろう。

 ただし、チャンポンだけはやめないとな。ミイラ取りがミイラになる。混ぜる前の回復水を飲んでみるか。ピッチャーに残っていた液体だ。葉は混入していないし、効果もすぐに消えるだろう。

 空の紙コップに注いで、と。

「おっ、確かにわずかに回復するな。地味に」

 本当に地味〜にだ。つまり、魔力を消費して回復水をつくって飲んだところで、魔力消費によって疲れるからプラマイゼロで何も変わらない。

 さて、次は……眠気効果の水はごく少量だけ……あー、なるほど。満腹になったあとのような、ふわっとした眠気を感じるかもしれない。で、味変化の水は……あれ、美味い。砂糖水みたいな味を想像していたが、やや塩気があって美味いぞ? なんだこれ。あ、前世で飲んだ梅昆布茶に似ているのか? こいつはセンスがあるな。この味はもうこの世界では堪能できないかもしれない。全部飲んでしまおう。

「それ、美味しいの?」
「ああ。実はかなり美味い」
「ちょうだい」
「あ……」

 ひったくられて、飲まれてしまった。ゴクゴクいっちゃってる。

「美味しい……!」
「間接キスだな」
「……っ。気にするタイプじゃないの、私」
「令嬢がそれでいいのか」
「普段はやらないわよ!」
「せっかくだし、直接キスしてもいい?」
「駄目に決まってるでしょ!」
「気にするタイプじゃないって言ったくせに」
「直接は気にするわよ!」

 あわよくば、は無理だったか。