転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「久しぶりだね、ハロルドくん。ちょうどパトロールをしていたところなんだ」
「パ、パトロールですか」
「ああ。これでも王子だからね。学園の秩序のために奔走する『学園パトロール隊』として、実は動いているんだ。王子というのも大変さ。困り事の気配を感じて寄ってみたんだけど、なんかあったのかい?」

 気さくに笑顔で問いかけると、彼は少しほっとしたような表情を見せた。

「昨年までは学園警備隊という名前で活動されている先輩方がいましたが」
「ああ、名前は自由らしい。俺たちは『学園パトロール隊』だ。かっこいいだろう?」
「そうですね」
「それで、何があったのかな」

 尋ねると、彼は少し言いよどんだ。

「お酒かな」
「ち、違うんです! 僕たちはその、魔法の実験をしていまして」
「そのようだね」
「水に特殊効果を付与する練習をしていたんです」
「ほう」

 ここは魔法世界。水や炎を生み出せるように、魔力を消費して液体になんらかの効果を付与することができる。

 液体はキラキラと独特の光をわずかにまとい、味を変化させたり体力を回復させたりすることができる。どれだけの魔力や時間を消費するかで効果の強弱も変わるが、特定の植物の葉などを用いなければ大した効果はない……普通は。

「それで……その、闇鍋ならぬ闇水で、効果を当て合う遊びをしていまして」

 楽しそうだな!

「へえ。飲んでみて、疲れが吹き飛んだら回復薬だろうとか、そういうことかな」
「は、はい」
「なるほど。面白そうじゃないか!」
「はい! そうなんですよ。それでつい、全部混ぜたらどうなるかなーとかやっちゃいまして」

 分かる分かる。
 俺だってやってみたい。
 そんな陽キャの仲間入りをしてみたい。

「それで、こうなったのか」
「はい……。僕は皆の様子を見てやめました」

 他のメンバーはこちらを見ているものの、眠そうだ。顔も赤い。ただ、苦しんでいる様子はないな。

「液体の効果は」
「混ぜる前のものなら。そちらのピッチャーの右から順に、回復、眠気、味変化、精神高揚……ここまでは確かな効果を感じました。残りの二つは、魔法効果増幅と毒消しだそうです。単体で効果が分かるものではないので断言はできませんが。そして、最後の二つは……分かりません。その二つを作った者が『秘密、秘密』と言って、気分が高揚したまま混ぜてしまって……。自分は少し怖くなって、皆の様子を見ていたんです」
「なるほど」

 この生徒――ハロルドくんが作ったのが、おそらく「魔法効果増幅」だろう。自分の水以外を飲んだから効果が増幅しなかったんだろうな。

 この状態になったのが自分のせいだろうと察して、咄嗟に誤魔化したに違いない。そんな顔をしている。チャンポンは飲まずに様子を見ていた……と。

 正体不明の二つのうち一つは酩酊効果かな。酒に似た感覚を味わえて酒より早く抜けるから一般的だが、十六歳未満の子供には禁止だ。この学園には十六歳以上の生徒しかいないが……学生には推奨されていない。うーん、チャンポン
して予期せぬ効果も付与されている気がする。

 ん?
 隅に小さなすり鉢が置いてあるぞ。