転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 茶トラ猫の話を聞いたところ、元は人間でどうやら何十年も追い続けた夢がやっと叶うというところで、猫の姿でここへ来てしまったらしい。その直前に女神と会話をしたので、動揺などはなかったようだ。

 ……俺は、女神も光も何もなかったけどな。

 どんな夢だったのかや、どんな人だったのかなど肝心なことは何も話さない。俺はとりあえず話を聞きながらオリヴィアにメッセージを飛ばした。

『異世界から尾が二つの猫出現。人間の言葉を話す。光は消えた』
『そこに留まっていて。報告後に行く』

 うーん……留まれということは、このままこいつが人前に出るとまずいとオリヴィアも判断したのだろう。そのあたりを学園長や顧問と相談するんだろうな。

 話が一段落したところで切り出す。

「おい、猫」
「態度がふてぶてしいにゃん」
「俺は王子だ、当然だろう」
「王子にしてはバカっぽいにゃん」

 まだバカっぽいこと言ってないだろ!

「人の言葉を話すとなれば、大騒ぎになる。あり得ないことではないが、俺もそんな猫の話を聞いたことはない」
「うにゃ」
「見つかれば管理される……と思う」
「神様も魔法もある世界にゃん。マスコットキャラとして受け入れてもらえるはずにゃん」
「無害だと確証を得るまで無理だろう」
「うーにゃぁ」

 悩ましそうに顎に手を当てている。こんな猫がいてたまるか。

「野生の猫として不味いものを食べるしかない生活は嫌にゃん。大事に愛情深く管理して、それなりに自由に育ててほしいにゃん」

 ニートか!
 いや、飼い猫とはそういうものか……。

「あ、そうにゃん。女神様が特別に何かの能力をくれるって言うからなんでも食べられる体をもらったにゃん。チョコレートだって食べられるにゃん!」
「……魔法は? チート能力は?」
「なんにも使えないにゃん。でも、人語をしゃべられるにゃん。すごいにゃん。にゃんにゃん言ってるのは女神の趣味にゃん。止められないにゃん」

 駄目だこいつ。そこはチート能力をもらっとくところだろう。ついでに、女神の趣味もおかしい。なんなんだ、この世界は。

「とにかく、今後どうするかは俺たちの指示に従ってくれ」
「……具体的にはどうするにゃん」
「もうすぐ誰かがここに来る。リュークとベル子が抜刀したからな。まずは話し合いだ」
「オリヴィアがいないにゃんね。呼んだのにゃん?」

 こいつ……!
 俺とオリヴィアがメッセージを飛ばし合えることは、この場ではラビッツしか知らない。オリヴィアの存在まで知っているということは、こいつは間違いなくこのゲームをプレイしたことがある。俺たちと同じ世界から来たのかもしれない。

「ニコラ王子は、オリヴィアへメッセージを飛ばせるにゃんね?」

 それを皆に話すのはまだ先だったんだけどな。