転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「なんだ、これ……」

 切り立った岩の穴がなぜか光っている。目の前の試しの女神像の後光のようだ。というか眩しくて、そもそも像がほとんど見えない。 

「みんな、下がってろ」
「私も戦える」

 リュークとベル子が剣を抜いた。
 俺とラビッツとルリアンは杖を構える。

 剣を抜いたということは、学園スタッフに検知されているはずだ。振り子が振れたことは動かした張本人である顧問がとっくに学園長に伝えているだろう。俺たちがここにいることも把握されているに違いない。

 何かあっても助けは来る……が、ここに他の学生が来るのはまずそうだ。オリヴィアにも先に伝えておけばよかったな。今から送るか。

 こめかみに指をやる。オリヴィアを強く意識し、キィンと耳鳴りがしたところでメッセージを頭の中で唱える。

『試しの女神像の岩穴が発光。剣は抜いた。危険の有無は不明』
『そう。立ち入り禁止にしてもらう。続報を待つわ』

 ……ふぅ。やっぱり少しだけ疲れるな。ざっくり三十文字程度が限界だが、その時の体力にもよる。

 俺たちは、じりじりと女神像の側へ寄った。眩しさが増し強い風も吹き始める。ベル子が魔法の障壁を張った。風だけでなく光も和らいだということは、この光に魔力が宿っているということだ。

「ニコラ、お前は下がっとけ」
「除け者にすんなよ。みんなで楽しもーぜ!」
「……ったく」

 リュークがベル子に「お前は障壁を維持してくれ」と言うと、高く跳躍した。魔力の乗った剣が、一層輝きを増した光を切り裂いていく。そうして女神像の真上を横薙ぎし――、

「なにするにゃん! 危なすぎるにゃん!」

 光が消え去ったそこには、一匹の猫がいた。茶トラ猫だ。ラビッツとルリアンが可愛がっていた茶トラ猫に色は似ているが……尻尾が二本ある。化け猫だ。しかも胸の真ん中に大きな薔薇のコサージュがついた橙色のふりふりドレスを着て、立っている。

 ――漫画かよっ!

「……ラビッツ、この世界に化け猫はいたっけ?」
「いなかったわね。お化けはいるわけだし、化け猫がいてもおかしくはないかもしれないけど……」

 顧問のことだな。この世界では正式には思念体という言葉が使われるものの、通称はゴーストだ。

「でも、こんなのゲームではなかったわ」
「そうだな」

 毛を逆立ててシャーと威嚇していたが、何かに気づいたかのような仕草のあとに――、

「早くここから降ろすにゃん!」

 そう言って、女神像の頭の上で固まったまま震える。すぐにリュークが高く跳び、雑に持って戻ってきた。するりと猫が地面へと四つ足で降り立つ。そして、また立った。

「もう少し丁寧に扱ってほしいにゃん」
「お前、何者だよ」

 リュークはまだ警戒しているようで、剣を構えたままだ。

「にゃっふっふ! にゃんと別世界から来たのにゃん!」
「別……世界!?」

 皆が驚く中、俺とラビッツは目を合わせて頷いた。

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