転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!」

 秘密基地の部屋は、来てみたら様変わりしていた。まるで高校のように前向きに並んでいた机と椅子がなくなり、代わりに木製の円卓が中央に用意されている。くつろげる雰囲気だ。

「なんか豪華になってないか?」

 リュークがルリアンに聞いた。当然の疑問だろう。俺とラビッツはゲームで知っているだけに、わざとらしくやや驚く顔をするだけでだんまりだ。

「はい。顧問の先生が『用意しておいたぞ』とおっしゃって。すぐにどこかへ行ってしまいましたけど」
「あいつ、何者なんだ」

 俺を見るなー。
 何を言うか考えるのも、大変なんだぞ。

「学園長の知り合いっぽかったし、なんとかしたんじゃないか?」
「あー、そういえばそうか。あの格好のまま顧問は学園長と普通にしゃべってんのか……」
「あはは。せっかくなのでと机や棚を新調していただいたそうです」
「…………」

 だから、皆して俺を見るな!

 ま、そうなんだよな。王子である俺がいるので、せっかくならいいものにしようと、やや高級仕様だ。背後には王家からの寄付金の存在がチラついている。皆もそんな流れを察しているんだろう。

 俺はルリアンの言葉に、わざと感心してみせる。
 
「なるほど。顧問に『これがあれば便利そうだ』と頼めばなんでも手に入りやすそうだな」
「はい。必要なものがあればお伝えします」

 部屋がこうなるのは知っていたが、ここはゲーム世界とは違う。頼めばそれこそ、ほんとにいろんなものが手に入るかもしれない。

 よし、ここは陽キャっぽく!

「今度エロ本を頼んでみよーぜ!」

 ――スパーン!

「いてーよ!」

 ラビッツに扇子ではたかれた。

「学園パトロール隊をいかがわしい団体にしないで! あんただけ脱退させられるわよ」
「じ、冗談だよ、ラビッツ」
「私という婚約者がありながら、変なものを頼もうとしないで」
「わ、分かった、分かったって」

 ちょっとした冗談なのに。いや、陽キャというより、ただのセクハラだったかもしれない。

「……ラブラブ?」

 ベル子が顎の下に人差し指を立て、こてんと首を傾げた。

「そのとーりだ!」

 嬉しくなった俺は親指を立ててキラリと歯を輝かせ――、

 スパーン!

「違うわよ!」
「いてーよ! 今のは叩くとこじゃないだろう」
「え? えーと???」

 ゲームよりも叩かれる回数が増えている気がするな。まったく。ゲームでは婚約者ネタで調子に乗っても、扇子は飛んでこなかったのに。せっかくなら、そこも原作通りにしてほしいものだ。

「ラブラブじゃないの? ラビさん」

 お、あだ名になったな。

 ゲームだとラビッツの入隊はもっと遅く、それからあだ名で呼ばれるようになる。今朝の食堂でも一緒にいたしな。ラビッツは貴族で俺の婚約者だから、まだ「さん」付けなのは仕方ない。

「そ、そんなんじゃないわよ」

 なんでそこでモジモジするんだよ、ラビッツ! 俺が期待しちゃうだろ!?