転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 ついにこの日が来たか。
 王立魔法学園の入学式だ。

 日本のゲームだからか、桜が咲き乱れている。俺の頭にはジャパリス国から輸入された花だという、前世とはまったく違う知識が埋め込まれている。

 前世では、トラックに轢かれそうな子供を助けてあの世行き――というベタな最期を迎え、気がついたらこの世界にいた。俺を育ててくれた両親にも、クラスでたった一人の友人にも申し訳ない。せめて、助けたあの子が無事でいてくれたらと願う。

 この半年間、大変だった。

 ニコラの身分は王子。
 記憶を引き継いでいるとはいえ、混乱していた俺を皆が支えてくれた。人前で話す訓練などのスパルタ再教育により、やっとニコラらしさが板についてきた。

 公では王子らしく振る舞うものの、プライベートではお調子者のおバカキャラ。「泥船に乗った気で俺様に任せとけ!」が口癖の憎めない奴。それがニコラだ。

 ――そして今日、あのゲームの舞台が始まる!

 陰キャな俺とはオサラバだ。誰も前世の俺を知らないこの世界で、リア充としての日々が幕を開ける。
 
 今日が俺の転生デビュー初日だ!

 期待に胸を膨らませ――といきたいところだが、足がガクブルだ。王子としての訓練とは違う緊張感がある。なにせここには、最推しのラビッツがいるのだから。

「おいおいニコラ、顔が真っ青じゃねーか。大丈夫かよ」
「大丈夫だ。俺は王子、問題ない。俺は王子俺は王子俺は王子……」
「全然大丈夫じゃねーだろっ」

 ポンッと俺の頭を小突いたのは、幼馴染で親友の騎士、リューク・ダイバーン。青い髪と瞳でクールに見せている。飄々としてるくせに仲間思いの、かっこいい奴だ。俺の悪ノリにも付き合ってくれる。

 辺境伯家から預かる形で、王宮で仲よく過ごしていた。ここ何年かはリュークだけ騎士学校に入っていたのでしばらく会ってはいなかったものの、俺専属の護衛になるべき才能ある人材として育てられ、悪い扱いはされていない。本人は三男だから気楽でいいと呑気にしている。

 そして――来るぞ。
 俺の最推しが、もうすぐ!!!

 会える日を待ち望んでいた、ラビッツ・ロマンシカ。平民出のルリアン・ウィービングと対をなす悪役令嬢。俺の婚約者なのにリュークの攻略対象であるせいで、一番不人気だった。

 リュークに惹かれちゃダメ、ニコラの婚約者なんだからと切ない乙女心や葛藤や苦悩を抱えながらもツンツンしているところが激萌えなのだ。

 今の俺の立場からすると複雑だが……。

 そろそろだ!
 そろそろ来るはずだ!