転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「今日から恋人ってことで、お願いしたい」
「んー。今のあなたのこと、まだあんまり知らないのよね」
「絶対にお買い得だぞ。なにせ、ニコラ時代の効率のいい記憶方法も覚えている。たぶん、俺の成績は上位に食い込むはずだ! コミュ力も多少は上がった……はず……いや、どうかな」

 よく考えると、ニコラの時もプライベートで楽しく好き勝手話せるのはパトロール隊員だけだった気がする。……場に応じて使い分けるのは上手くなってると思うけど。

「そこは自信がないの?」
「う、ま、まぁ、王子にも国王にもなれないけど、ビッグにはなるかもしれない。平均身長を超えた成績優秀者! お勧めだぞ」
「……成績優秀って、まだ高校に入学してもいないでしょ?」
「だからこそ、今が買いだ。上がり切る前に買うのが鉄則だろう」
「……株でもやってるの?」
「適当に言ってます。すみません」
「まったく」

 本当に相変わらずねと、美羽が笑う。

 春の風が爽やかに通り抜けていく。
 桜の花びらがふわりと舞い上がり、美羽の髪にひとひら落ちる。彼女がそれを指先で摘むと――、

「恋人になっちゃおうかな」
「いいのか!?」
「ふふっ、よかったわね。高校デビュー、できそうで」

 ポンと花びらと一緒にウサギのフェルト人形を渡された。俺も、ビーズリングを根性で作ってくればよかった……。

 長い黒髪と白いカーディガンの裾が風に揺れる。以前とは違うのに、懐かしくて愛おしい。

「転生したお陰――、転生デビューね」

 ふと思い出す。
 あの世界でも同じことを思った。

 高校デビューならぬ、転生デビューするんだぞと。

 ――俺と彼女が同じ高校に入学していることを知るのは、明日のことだ。

 ここでは、願いの光は目に見えない。けれど空はどこまでも青く、春の光がきらめいていた。

 奇跡のような再会。
 あの日の約束は、まだここに。

 ――大好きな彼女との日常がまた、始まる。

 もう一度、生きて笑って、
 そして、恋をしよう。


〈完〉