転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 ――ピコン。

 スマホの通知音が鳴った。

 心臓が跳ねる。通知のアイコンには、小さな「①」。……ダイレクトメッセージだ。

 誰からだ?
 フォロワーはまだ十人もいないのに。

 俺がSNSを始めて三日。

 名前は『転生人』。バナーには『平均身長を超えた』とデカデカ書いておいた。実際に今の俺の身長は、平均を超えている。これはもう間違いなく遺伝の影響だろう。親に感謝だ。

 アイコンは、さっき変えた。
 ウサギのフリー素材にしていたものの、オリジナルの「平均身長を超えたTシャツ」が届いたからだ。それを写真で撮ってアップした。

 プロフィール欄には、いかに俺があのゲームを愛しているかを熱く語り、最後にこう書いた。
 
「こちらはニコラ×ラビッツを愛でるためのアカウントです」

 昨日、『#今日も可愛い俺の嫁ラビッツ』というハッシュタグをつけて、二コマ漫画を投稿した。

 一コマ目には「俺、もう我慢できないんだ!」と叫ぶニコラ。その背景に「キスしたいキスしたい」と心の声を並べた。二コマ目には「婚前交渉は駄目だからっ!」と真っ赤になって慌てるラビッツ。

 憂いが晴れ、明るい未来を誓い合った、あの日のひとときだ。

 もちろん、固定にした。

 俺がかつての記憶を思い出したのは偶然だ。たまたまあのゲームのイラストを目にしたから、プレイした。あれを見ていなかったら何も思い出せないままだった。

 今の彼女に偶然会えたとしても、俺のことを覚えていない可能性の方が高い。そのまま、すれ違ってしまう。

 もし思い出してくれたなら――、俺との再会のきっかけになりますようにと。そう願って、アカウントを開設した。 

 震える指で、画面をタップする。
 
▷はじめまして。
漫画、見ました。
私はあのゲーム、もう一つのアナザーストーリーがあってもいいと思っています。リュークとセイナが結ばれる未来。
あなたは、その未来を知っていますか?

 読んだ瞬間、頭が真っ白になった。

「……ラビッツ……?」

 名前を呼んだ途端、涙がぶわっと溢れた。必死に拭っても止まらない。

 震える指で文字を打つ。

▷知っています。
セイナは天に還ったあとにもう一度あの世界へと現れ、ラビッツがセイナを義理の妹にしてくれて、彼らは結婚した。

 すぐに、返事が届く。

▷ニコラが動いてくれたから。

「ラビッツだ!!!」

 思わず叫んだ。
 胸が痛いほどに熱くなって、泣き笑いみたいな声が漏れる。

 そのあと、俺たちは互いについて教え合った。住んでいる場所は、電車で一時間ほどの距離。

 ――迷う理由なんてない。

 俺たちは、会うことにした。

 ◆