転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 授業も始まり、セイナがいるのも当たり前となり、日々の流れが少しずつ落ち着いてきた頃。俺とラビッツは湖へと足を向けた。

 春の光が水面に反射し、柔らかな風が俺たちを包む。二人だけの静かな時間だ。誰かが来てもいいように、木陰で人目を避ける。

「ラビッツ、ありがとな。いろいろ」
「なによ、あらたまって」
「たくさん助けられたなって」
「そんなの……私だって」

 ラビッツの左手の薬指には、いつも通り俺のあげたビーズリングがはめられている。決して高価ではないのに、大切にしてくれているのを感じる。

「手、繋いでいいかな」
「……っ、皆の前では繋がないんだからねっ」
「分かってる」

 俺がどうしてここに来たか。

 それは、秋から一度もしていないキッスをしたいからだ!!!

 と、叫びたいけど叫べない。

 ムードづくりゼロ点と言われるのが目に見えているからな。一応、木陰まで来るのも拒否はされていないし、俺の気持ちを察してくれている……のかもしれない。

「ほんとに感謝してるんだよ。今を迎えるために、ラビッツにはたくさん支えてもらった」
「……あんた、よく泣いてたもんね」
「涙腺弱いんだよ! 悪いかよぅ」
「私も弱いし。悪くはないわよ」

 リュークとセイナが想いあっていることに気づいてから、どうしても耐えられず……ラビッツと一緒にダンスを練習したあの部屋で、実はよく泣いていた。俺が「あとから寮に戻るよ」と言って離脱するとラビッツもついてきて――、一緒に泣いていた。

 はー……、かっこ悪い。

 いや、ここでしょぼくれてはいけない。そう、今こそムードづくりをすべき時なんだ。