転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「あ、そういえば言い忘れていました。今日、皆が集まった頃に新しい顧問がここに挨拶に来られるそうです」

 よかった、話が変わった。
 そうか……新しい顧問か。

「誰が顧問になるの?」

 オリヴィアの問いに、ルリアンが口を開こうとした時――、

「ふぉっふぉっふぉっ!」

 突如、部屋の扉の向こうから陽気な笑い声が響いた。全員が一瞬、動きを止める。

 扉の前で笑ってる!?

「おっと、失礼失礼」

 ノックの音が今さら聞こえ、扉がゆっくりと開いた。

 現れたのは、ふわりとした白髪と紅茶色のマントをまとった老人。丸眼鏡の奥の目が、いたずらっぽく細められている。

「いやはや、若者は活気があってよろしい。名誉顧問のグレイウッドじゃ。名は覚えんでもええ。顧問でええぞ」
「あ、この度はパトロール隊の顧問を引き受けていただき、ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
「もちろんじゃ。歳は離れておったが、昔からグレンくんとは茶飲み仲間でのう。あやつが思念体になってからも、よく付き合ってもらっておった。あやつは歳をとらんくなったせいで、ワシだけが老いぼれたがな。はっはっは」

 懐かしそうに笑う。

「ありがとうございます。これからお世話になります」

 ルリアンに合わせて皆が頭を下げると、名誉顧問はにこにこと紅茶の缶を取り出した。

「堅苦しいのは抜きじゃ。ワシはなーんもできん。顔がきくだけじゃ。何かあっても揉み消せるぞ。これからも好きなように活動せい。せっかくだから、茶でも飲もうじゃないか」

 名誉顧問が深い紫のハンカチで空間をひと撫ですると、何もなかったはずのテーブルに、見事なティーセットが現れた。誰もが驚きで目を見開く。

「ふぉっふぉっふぉ。グレンくんから手品の手ほどきも受けてたんじゃ」

 顧問は旅立っていった。
 でも、こうやって新しい出会いがある。

「さぁ、若者たちよ。グレンくんの待ちわびた新しい春を始めようじゃないか」

 名誉顧問が軽くステッキを振ると、カップの中にあたたかな紅茶が満ち、ふわりと香ばしい焼き菓子が並んだ。

「ふぉっふぉっふぉ。ティータイムの準備完了じゃな。遠慮せず飲むがよい」

 ふわりと紅茶の香りが広がり、皆の表情も和らぐ。