転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「バルトくん、来てくれたんだね」
「久しぶりだな」
「うん。すっかり国王様になったんだね。風格があるね、びっくりしたよ。私は……変わらないでしょ」
「ああ、あまりにも変わらない」
「……うん」
「今度こそ、変わるために戻ってこい」
「うん……そうだね」

 俺たちには知らない、たくさんの思い出が二人にもあるのだろう。

「ありがとう」

 セイナが俺へと向き合った。

「私、信じてみるね」
「……ああ」
「皆が大丈夫って言うなら、大丈夫だよね」
「ああ。必ず戻ってこれる」

 やっとだ。
 やっと……未来を見つめる顔になった。

 柵越しに手を握りあう。

「また、皆と過ごせるよね」
「もちろんだ」
「あのパトロール隊の部屋で、また皆とたくさんお話して」
「そうだな」
「先生に言えないような困り事を誰かが持ち込んだりして」
「ああ。これからもたくさん来るぞ」
「今度こそ私、ボトルフェスにも参加できるよね」
「当然だ。偶然、お互いのボトルを選ぶのかもな」
「楽しみだよ」

 わずかにあった手の感触が消えていく。少しずつ少しずつ……存在が薄れていく。

「また、会いに行くから」
「ああ。ずっと待っている」

 消えていく。

 入学式の日、旧校舎の上で学園を眺めていた女の子。俺にしか見えなくて、だからやけに気になって……。皆にも見えるようになったと思ったら、存在ごとなくなってしまう。

「戻ってこい」
「うん」
「必ずだ」
「うん」

 キラキラと世界に溶けていく。

「今だけ、サヨナラ」

 まるで最初からいなかったように、そこから存在が消えた。俺の手は、空を掴むようにさまよった。

「セイ……ナ」

 静寂が訪れる。
 消えてしまったその場所から、光すらも消える。

「セイナアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!」

 気づけば、俺は叫んでいた。
 天に届きそうな声で。

 力なく、その場に膝から落ちる。

 光が昇っていく。

 ――いつかまた、君と会いたい。

 ここにいる全員の想いが波のように空へと昇っていく。天へと還っていく。

 彼女の温もり。
 高くて元気な声。
 跳ね回る姿。

 それはもう、どこにもない。

 ただ縋るように、その光を見上げていた。