転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

『でも俺は! セイナに帰ってきてほしい! 思念体としてじゃない、人間として帰ってきてほしいんだ!』
『皆も呼びかけてほしい。セイナが心からそれを望んでくれるように』

 二人の声が、はっきりと聞こえる。
 この儀式のために拡声のための魔道具が使われている。が、それだけではない気がする。頭に響くようなその声に、大きな何かの力を感じる。

『この光を見て。小さな願いも、今日はこんなにも美しく光り輝いている。皆の願いを一つにすれば、きっと叶う』

 ニコラとラビッツが杖に飛び乗った。こちらへ飛んでくる。一緒に塔を囲んでいた生徒たちもこちらへ走ってきた。

 ラビッツが声を張り上げる。

『セイナ! 過去にとらわれるわけじゃない! 縛られるわけじゃない! きっと人として戻ってこれる! 私とニコラがここにいる! だからあなただって、きっと……!』

 その声に呼応して、たくさんの生徒たちが次々と声をあげる。

「セイナー! 勝手にどっかに行くなー! また台車リレーやるんだろー!」
「一緒にまたお菓子も作るんでしょー!」
「リュークくんに、ピリ辛のワッフルを焼くんだって話をしてたじゃないー!」
「さよならも言わずに立ち去ろうとするなんて、薄情だぞー!」

 思い思いに叫ぶ生徒たち。

「な、なにこれ……、還ろうとしてる私が、悪者みたいじゃない……」

 ニコラが空中で、杖の上に立って大声で叫んだ。

『今日は特別サービスだ! 今日の夢結びの儀は、どんな願いだって叶うんだ! 俺が言うんだから間違いない!』

 セイナが自分の透けた体を見ながら「でも……でも……」と動揺している。

 屋上の扉が開いた。

「セイナ」

 顧問と学園長と――、それから国王陛下!?

「親父ぃぃ!? 間違えたっ、父上!?!?」

 ニコラ、どうしてお前はこういう時にそうなんだ。杖から落っこちそうになって、慌ててバランスをとっている。

「先生……」

 顧問の体も透けている。
 
「帰ってこい。また、人間として」
「そんなの……」
「信じろ」
「信じて……いいのかな」
「皆、信じている。信じていないのは、お前だけだ」
「そっ……か」

 国王陛下が、ゆっくりとセイナに近づいた。