転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「ニコラ。私たちは一度、人生の終わりを迎えたわ」
「あ、ああ」
「それなのに、ここにいる」
「そう……だな」
「きっとセイナも、もう一度戻って来れるわよ。もっともっと幸せな形で」

 俺だってそう信じたい。

「でも、俺たちは転生だ」
「トラは?」
「トラ……」
「突然、現れたじゃない?」
「……分からない。その前にいた茶トラ猫に会っていない。本物の猫に転生したのかもしれない」
「でも、しっぽが二本になったわよ」
「しっぽ……」
「無から有が生まれているじゃない」

 確かに……そうかもしれない。無から有が生まれる可能性は、ゼロじゃないのか。

「ニコラ、その時が来たらはっちゃけるんでしょ? 今がその時なんじゃない?」

 はっちゃけていたつもりだった。セイナちゃんおめでとうの催しなんかやって、そのつもりでいた。

 そうか、今か。
 今だったのか。

 俺が暗い顔をしていたら、何も始まらない。

「そうだよ、リューク。俺たち三人だけじゃない」

 待つだけじゃ、奇跡は起きない。
 奇跡は自ら起こすんだ。

「皆で願えば、きっと叶う」

 あの神ゲームの世界の結末が、悲恋だなんてあってはならない。あるわけがないんだ。ゲームの世界なんてものが実際にここに存在している。それならきっと――彼女だって、また現れる。

 リュークがグシッと目を拭い、空を見上げた。

 どこまでも青い空。
 あの約束をした日のように、雲一つない――。

「そうだな」

 声の調子が、さっきとは違う。

「次の春になったら転校生が来るんだったよ。名前はセイナ・ラミエル。どこから来たのかも分からない謎の転校生だ」

 久しぶりに、リュークの心からの笑顔を見た気がした。

 ふわりと三つ、光の球がどこからか現れ、空へと昇っていった。