転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

「ここが学園トラブル対策室、学園パトロール隊の秘密基地です!」
「うむ、ただの教室だな」
「はい。どの教室にするかは、朝に学園長と決めましたから。それから、勢いで言っただけで、秘密ではないですよ」
「分かってるさ。素晴らしい秘密基地だ」

 俺たちは案の定、なんの成果も得られなかった。

 どこかに寄ることもなく、突然現れた猫にルリアンが「猫ちゃんだ。可愛い〜」と絡みに行き、ラビッツまで「可愛いわね」と猫を猫可愛がりしていた。

 明るいオレンジブラウンの地に茶色の縞模様が入った、茶トラ猫だ。ゲームでもルリアンのお友達として、たまーに姿を見せる気ままな存在だった。

 ルリアンが友達を欲しがっていることは、ラビッツも知っているはずだ。やや遠慮がちではあったが、笑顔で彼女と会話していた。この世界では、ルリアンにみみっちい嫌がらせをすることはないのかもしれない。

 嫌がらせといっても、リアルな虫の人形を彼女の鞄の中に忍ばせたり、危ない目に遭っているところを助けたうえでバカにするといった具合だった。リュークとすぐに仲よくなったルリアンに、文句をつけたいだけだった。リュークにたしなめられ、謝罪もかねて入隊する。

 ……まぁ、ルリアン自身は嫌がらせをされているという認識はなく「イタズラが大好きで、危ない時は助けてくれるし注意もしてくれる優しくてお茶目な人」だと思ってはいたが。

 ここで嫌がらせすらしないとなれば、もしかしたら「悪役令嬢」という異名はつかないのかもしれない。

 うん、俺だけが知る悪役令嬢になるのかもしれないな! それもいい響きだ。

 でもな……ゲームでは、リュークが選択肢で「もしかして、ルリアンに嫌がらせをしていたのは……」を選ぶとラビッツルートに突入する。何もしなくてリュークと上手くいくのか? 無理なんじゃないか?

 うーん。上手くいかなくて落ち込むラビッツを慰めて、俺に気持ちを向かせる作戦にするか。

「リュークさんたちはまだのようですね」
「そうだね。たぶんメンバーを集めてくると思うよ」
「うう……すみません、私が猫ちゃんに夢中になったばっかりに」
「いやいや、猫に夢中な二人を見られて眼福だったよ」
「ほえ?」

 ――スパーン!

 ……またラビッツに頭を扇子ではたかれた。

「いてーよ!」
「どうしてあんたはそんなにバカ王子なのよ」
「思ったことがつい口に出るんだよ!」
「はぁ……」

 は! ラビッツとの未来のためには他の子に気があると思われたら駄目だな!
 
「猫にはぁはぁしている可愛いラビッツが見られて最高だったぜ! 俺も猫になってラビッツに可愛がられたいね」
「言い方ぁ!」

 ――スパーン!

 叩きすぎだっつの!