転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 紐にくくりつけられた横断幕には「セイナちゃん、おめでとう」と書いてある。何がおめでとうなのかは明示されていない。

「ニコラくん、本当にこれやっちゃったんだね」

 最初はニコラ王子と呼んでいたものの、何度かニコラくんと言って慌てているのを見て、俺の親友は「ニコラくんと呼んでくれ。王子としての命である」と偉そうにしていた。

「ああ。やると言ったらやるんだ。セイナ嬢、おめでとう」
「何がおめでたいのか分からないよ……」
「なんでもいいじゃないか。俺はやりたいことをやると決めたんだ。はっちゃけるんだ。いえーい! セイナ嬢、おめでとう!」
「うううっ。ありがとう。何をか分かんないけど、ありがとう!」

 ニコラとセイナがハイタッチをすると、次々とパトロール隊のメンバーがハイタッチをしていく。

「セイナちゃん、おめでとうございます!」
「ありがとう。よく分かんないけど、ありがとう」
「セイナちゃん、えいえいお〜……」
「ありがとう。えいえいおーで頑張るぅ。何をか分からないけど頑張るぅ」
「めでたいにゃんね」
「たぶんっ、めでたいのかなとっ!」
「めでたいものは、めでたいでいいのよ」
「ううぅ、おめでたい気がしてきたよぉ」

 変な丁寧語はたまにしか出ない。この歓迎会の準備の中で打ち解けて、セイナの意識の中でもすっかり仲間の一員なのだろう。

「それじゃ、ルリアン隊長。ご挨拶をどうぞ」

 ニコラに悪戯っぽく促されて、ルリアンが姿勢をただした。

「……えーと。本日は皆さん、ご参加ありがとうございます」

 真面目なトーンに切り替わる。

「今日は皆の歓迎会ということで、セイナちゃんも含めて皆で準備しました。横断幕はニコラさんの希望でこうなったんですが……なぜだかすごくしっくりくるんです。私たちがセイナちゃんと一緒に過ごせることが、どうしてなのか分からないけど、すごく嬉しいことだと感じるんです。だから、『セイナちゃん、おめでとう』がぴったりかなと思います」

「……ルリルリ……」

 違和感は誰も拭えない。楽しいだけの記憶にしたいとセイナは言っていたけど、何かがおかしいと誰もが感じている。

 だから、これでいいんだ。

 セイナを迎えた。そのための歓迎会を経て、きっとその違和感には蓋をできる。

 ニコラには感謝しないとな。