「ここで踊ろうぜ。俺とお前だけの交流会だ」
彼女が潤んだ瞳で、困ったように眉を寄せる。
「む、無理だよ。私、ものすごく昔に教養科目でダンスを少し習っただけ……。もう覚えていないの」
「なんでもいいじゃないか。誰も見ていない」
「でも私、あんなに綺麗に踊れないよ」
「あんなに?」
「うん。昨日、ニコラくんとラビッツちゃんがここで踊ってたの」
あのあと、ここに来たのか。
「親友のデート場所に、翌日来る俺。格好悪いな」
「この場所じゃないと、私ふわふわしちゃうし。あ、会えて私は嬉しいけど」
「親友と同じデートコースで同じデート内容はないだろう」
「えっ、同じデート内容って。えっと、私たちはその、えっと」
遠くに学生の姿は見えるけど、誰にも気づかれない。この場だけが別の時間に切り取られているようだ。
「ほら、手」
「ほんとに私、踊れなくて」
「適当でいいんだよ」
そう言いながらも、そっと指先を重ねてくれた。この場所でだけ感じる温もりだ。春の陽ざしに、影が二人ぶん伸びている。
「わっ、わっ」
最初はぎこちなかったセイナが、小さく笑う。
「これ、絶対正しいステップじゃないよね」
「転ばなきゃいいんだよ、転ばなきゃ」
互いの靴が軽く何度もぶつかる。その度に二人で顔を見合わせて笑う。
「リュークくん、一応貴族なんでしょ?」
「一応な。ニコラの側にいるのに便利な肩書きってだけだ」
「ほんとに好きなんだね、ニコラくんのこと」
「好きとか言うな。ま、前世を思い出したニコラも悪くはないな」
「ふふっ」
顔を赤く染めながら俺を見上げるセイナ。
風に舞うスカートの裾と髪が陽光を受けてきらめき、本当に生きているようだ。
「奇跡は……起きないのか」
「起きるよ。皆に、私の姿が見えるようになるよ」
そのあとに、本当に消えてしまうのか。
問えば傷つける。
だからこれ以上は聞けない。
ニコラ、頼むよ。
この世界について詳しいんだろ?
なんだか分かんねーが、前世の記憶があるんだろ?
奇跡を起こしてくれ。
俺からセイナを奪わないでくれよ……。
彼女が潤んだ瞳で、困ったように眉を寄せる。
「む、無理だよ。私、ものすごく昔に教養科目でダンスを少し習っただけ……。もう覚えていないの」
「なんでもいいじゃないか。誰も見ていない」
「でも私、あんなに綺麗に踊れないよ」
「あんなに?」
「うん。昨日、ニコラくんとラビッツちゃんがここで踊ってたの」
あのあと、ここに来たのか。
「親友のデート場所に、翌日来る俺。格好悪いな」
「この場所じゃないと、私ふわふわしちゃうし。あ、会えて私は嬉しいけど」
「親友と同じデートコースで同じデート内容はないだろう」
「えっ、同じデート内容って。えっと、私たちはその、えっと」
遠くに学生の姿は見えるけど、誰にも気づかれない。この場だけが別の時間に切り取られているようだ。
「ほら、手」
「ほんとに私、踊れなくて」
「適当でいいんだよ」
そう言いながらも、そっと指先を重ねてくれた。この場所でだけ感じる温もりだ。春の陽ざしに、影が二人ぶん伸びている。
「わっ、わっ」
最初はぎこちなかったセイナが、小さく笑う。
「これ、絶対正しいステップじゃないよね」
「転ばなきゃいいんだよ、転ばなきゃ」
互いの靴が軽く何度もぶつかる。その度に二人で顔を見合わせて笑う。
「リュークくん、一応貴族なんでしょ?」
「一応な。ニコラの側にいるのに便利な肩書きってだけだ」
「ほんとに好きなんだね、ニコラくんのこと」
「好きとか言うな。ま、前世を思い出したニコラも悪くはないな」
「ふふっ」
顔を赤く染めながら俺を見上げるセイナ。
風に舞うスカートの裾と髪が陽光を受けてきらめき、本当に生きているようだ。
「奇跡は……起きないのか」
「起きるよ。皆に、私の姿が見えるようになるよ」
そのあとに、本当に消えてしまうのか。
問えば傷つける。
だからこれ以上は聞けない。
ニコラ、頼むよ。
この世界について詳しいんだろ?
なんだか分かんねーが、前世の記憶があるんだろ?
奇跡を起こしてくれ。
俺からセイナを奪わないでくれよ……。



