立食交流会の翌日。空は雲ひとつなく澄み切っていた。旧校舎の屋上に吹く風は、爽やかな五月の香りがする。
そこに、セイナが立っていた。他の誰とも違う、いつも通りの昔の制服姿で。
「ごめんね、ドレスじゃなくて」
彼女の瞳は不安そうに揺れていた。
「どうしても、最期の時の姿になっちゃうんだ。秋になれば、着替えられるんだけど」
その言葉に、ハッと息をのむ。
いつか皆にも見えるようになる。俺だけの特権ではなくなる。それをほんの少しだけ残念に思ったのか、そのあとの別れを考えてしまったのか。
「……顧問は、アレが最期の姿だったのか」
誤魔化すように思わず口にした俺の問いに、セイナは肩をすくめて少し悪戯っぽく笑った。
「あはは、実はそうなの。あのイカツイ感じのネックレス以外は、そのまま。種も仕掛けもあるすっごい手品を、私たちの前で披露しようとあの格好で練習していたらしいの。内ポケットとか、あの服に実は仕掛けがいっぱいあるんだ。その時に、おかしな魔法の気配を感じたんだって」
髪が、風にさらわれて舞い上がる。この旧校舎でだけ、彼女は生きている人間らしくなる。
「私は寮に戻る途中だったんだけど、変な胸騒ぎがして……校舎の方にUターンしたの。今のここ、旧校舎にね。その途中に昔は発電装置があったんだ。機械室って名前だったけど小屋みたいになっていて、中に入るのも今と違って簡単だった。ちょうど先生と同じタイミングだったの」
語りながら、彼女の視線は遠くの学園内に向けられていた。生徒たちが何人か歩いている。ただそれだけの日常を、羨ましさと懐かしさが入り混じったような表情で見つめている。
「顧問の性格が謎だな」
俺がそう返すと、セイナは振り向いて笑みをみせた。
「私がつい距離感を間違えちゃうから……先生はもっと距離感を間違えて、私が浮かないようにしてくれてたんだよ。でも先生の手品はすごかったな。穴の開いてないピーマンの中に、なんとコインがワープするんだよ」
「それはすごいけど、地味だな」
「そうなの。すごいけど地味で、地味だけどすごいの」
いい先生だったんだろうなと思う。
「そっか。じゃ、今から二人だけの交流会をやろうぜ。お前昨日、来なかったしな」
ドレスを着れないから絶対に行かないと言い張っていたが、本当に来ないとは。
「行かないに決まってるよ。みじめだもん。女の子はみーんな綺麗なのに、私だけこんなんなんて、辛すぎる」
「俺は、待ってたんだぜ?」
「……他の女の子と踊るリュークくんのことも、見たくなかったもん」
セイナの声がかすれて震えた。前髪の隙間から、涙の光が反射する。
「ずっとそうだった。私は見ているだけ。慣れてるつもりだったんだけど」
俺は、手を差し出した。
そこに、セイナが立っていた。他の誰とも違う、いつも通りの昔の制服姿で。
「ごめんね、ドレスじゃなくて」
彼女の瞳は不安そうに揺れていた。
「どうしても、最期の時の姿になっちゃうんだ。秋になれば、着替えられるんだけど」
その言葉に、ハッと息をのむ。
いつか皆にも見えるようになる。俺だけの特権ではなくなる。それをほんの少しだけ残念に思ったのか、そのあとの別れを考えてしまったのか。
「……顧問は、アレが最期の姿だったのか」
誤魔化すように思わず口にした俺の問いに、セイナは肩をすくめて少し悪戯っぽく笑った。
「あはは、実はそうなの。あのイカツイ感じのネックレス以外は、そのまま。種も仕掛けもあるすっごい手品を、私たちの前で披露しようとあの格好で練習していたらしいの。内ポケットとか、あの服に実は仕掛けがいっぱいあるんだ。その時に、おかしな魔法の気配を感じたんだって」
髪が、風にさらわれて舞い上がる。この旧校舎でだけ、彼女は生きている人間らしくなる。
「私は寮に戻る途中だったんだけど、変な胸騒ぎがして……校舎の方にUターンしたの。今のここ、旧校舎にね。その途中に昔は発電装置があったんだ。機械室って名前だったけど小屋みたいになっていて、中に入るのも今と違って簡単だった。ちょうど先生と同じタイミングだったの」
語りながら、彼女の視線は遠くの学園内に向けられていた。生徒たちが何人か歩いている。ただそれだけの日常を、羨ましさと懐かしさが入り混じったような表情で見つめている。
「顧問の性格が謎だな」
俺がそう返すと、セイナは振り向いて笑みをみせた。
「私がつい距離感を間違えちゃうから……先生はもっと距離感を間違えて、私が浮かないようにしてくれてたんだよ。でも先生の手品はすごかったな。穴の開いてないピーマンの中に、なんとコインがワープするんだよ」
「それはすごいけど、地味だな」
「そうなの。すごいけど地味で、地味だけどすごいの」
いい先生だったんだろうなと思う。
「そっか。じゃ、今から二人だけの交流会をやろうぜ。お前昨日、来なかったしな」
ドレスを着れないから絶対に行かないと言い張っていたが、本当に来ないとは。
「行かないに決まってるよ。みじめだもん。女の子はみーんな綺麗なのに、私だけこんなんなんて、辛すぎる」
「俺は、待ってたんだぜ?」
「……他の女の子と踊るリュークくんのことも、見たくなかったもん」
セイナの声がかすれて震えた。前髪の隙間から、涙の光が反射する。
「ずっとそうだった。私は見ているだけ。慣れてるつもりだったんだけど」
俺は、手を差し出した。



