転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

 終わらない夢を見ている。

 ずっとずっと長い間。
 大人になれず。
 どこにも行けず。
 ただこの場所で。
 誰かにとっての大切な時間を見ているだけ。

「来たぞ、セイナ。あいつの息子が。ニコラ・スタッドボルトが」
「えっ。とうとうバルト王子の息子くんが来たの!」
「もうあいつは国王陛下だ。ニコラが王子だよ」
「……自分の名前も顔もイカツイって気にしてたから、息子くんの名前は軽い響きのニコラくんにしたのかな」
「さぁな。ほら、感じるだろ? 学園に入ってきた」

 ほんとだ。
 バルトくんと同じ匂いがする。
 存在の香り。
 女神様に愛されている匂い。
 学園の中から感じる。

 ……隣にいるのは友達かな。

 目をつむって集中さえすれば、学園内だけなら()()こともできる。声も聞こえる。

「ん? ニコラくんは、なぜか先生と似た香りがしますよ?」

 あとから来た女の子もだ。
 少しだけ異質な……。

 今までは先生からしか感じなかった。だから、同じ香りが自分もすると思っていた。でも、違ったのかもしれない。

「俺もちょっと訳ありだからなぁ……」
「これだけ長い付き合いなのに、まだ隠し事が!?」
「ふっふっふ、その通りだ。気になるだろう」
「人間、一つや二つ隠し事くらいありますよね。それよりニコラくんです」
「スルーされた!?」

 おじさんは油断するとすぐに説教くさくなるからなぁ。スルーが一番だよね。

「今度こそ私……」
「ああ、きっと大丈夫だ」

 ――どうして私がまだここにいるのかは分からない。

 きっとまだまだ足りなかったんだと思う。だってあの時、バルトくんも皆も悲しそうにしていたから。私の最期を皆、知っていたから。死んだはずの私が現れて、楽しく一緒に過ごすなんてできない。そんなこと、分かってた。

 楽しい学園生活を夢見ていた私の願いが大きすぎて、足りなかったんだ。

 今なら。
 私のことを知らない人たちと一緒なら、きっと楽しいだけの時間を過ごせると思う。未練もきっとなくなる。

 そうして今度こそニコラ王子に、天に還してもらうんだ。

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