柱:文芸部部室・放課後
ト書き
小ぢんまりとした部室。
壁際の棚には文学全集、文庫本、過去の文集がぎっしり並んでいる。
机を囲む数名の部員たちに文芸部部長の美月がプリントされた小説の原稿を配っている。
心音は少し緊張した面持ちで椅子に座り、視線は自然と奥の席へ──
颯真、美月から受け取った原稿を読み始める。
横顔は、真剣で近寄りがたいほど綺麗だった。
部長・美月「今日から入部した有坂さんです!みんな仲良くね」
心音(緊張しながら立ち上がり、お辞儀をする)「有坂心音です。よろしくお願いします!」
部長・美月「じゃあ早速だけど、新入部員の有坂さんに意見を聞こうかな」
ト書き
美月がやわらかな笑みで小説の原稿のプリントを差し出す。
心音は「ありがとうございます」と受け取りながら座り、ページをめくる。
心音、読むほどに眉が寄っていく。
奥の席で、颯真は静かに心音を観察している。
心音「……テーマは素敵なんですけど、主人公の行動が少し受け身すぎる気がします」
ト書き
空気がざわっと揺れる。
部員たち(小声)「おお……」「新人なのにハッキリ言うな」「可愛い顔して結構ズバッと行くタイプ?」
ト書き
颯真が原稿を軽く持ち上げ、心音へ視線を向ける。
その瞳は静かで、しかし刃物のように鋭い。
颯真(落ち着いた口調で断言するように)「物語は状況で動く。主人公が全部動いたら、説得力がなくなる」
ト書き
心音は少し頬を赤くしながらも、視線は真剣なまま颯真に向ける。
心音「でも……読者は主人公に感情移入します。その主人公の気持ちが動かないと、読んでいて苦しくなると思います」
ト書き
颯真の瞳がほんの一瞬、揺れる。
心音(心の声)「神宮寺君って、作品のことになると、ものすごく真剣になるんだ」
颯真「……感情だけで話を動かすのは、安易だ」
心音「安易かどうかは……書き方次第です」
ト書き
部屋の空気がピンと張り詰める。
だが、二人とも声を荒げていない。
美月は苦笑しながらも、どこか嬉しそうにしている。
颯真(心の声)「……言い返してくる。普通は流すところを、真正面から」
ト書き
部室は静まり返り、部員全員が二人のやり取りを見守っていた。
まるで、二人だけで空気を作っているような緊張感。
颯真は少しだけ息をつき、原稿を閉じる。
心音もふっと肩の力を抜く。
柱:同・部活終了後
ト書き
部員が次々と帰っていき、部室には心音と颯真だけが残る。
心音は帰る支度をしながら、そっと颯真の様子を見る。
彼は机を拭いているが、どこか落ち着かない様子。
颯真「……あの、有坂さん。さっきの意見。否定していたわけじゃないんだ」
ト書き
心音は一瞬驚き、すぐにふわっと笑った。
心音「ううん。ちゃんと言い合えるの、いいなって思ったよ。神宮寺君が本気で考えてるって、わかるから」
ト書き
颯真の手が止まり、少し顔が赤くなる。
颯真(心の声)「そんなふうに言われたの、初めてだ……」
柱:昇降口・同日夕方・雨
ト書き
心音が昇降口を出ようとすると、空が急に暗くなり、雨がざあっと降り始める。
心音は慌ててバッグを探る。
心音「……うそ、忘れてる。今日に限って……」
ト書き
焦った顔で立ち尽くす心音。
颯真がその横を静かに通り過ぎる。
──と思った瞬間。
彼はピタリと足を止めた。
傘が開く音が響く。
颯真は無言のまま、心音の頭上に傘を差し出す。
颯真「……入れ。濡れる」
ト書き
心音は一瞬息を呑む。
心音「ありがとう……」
ト書き
二人並んで歩きだす。
傘の下にある二人の肩が触れそうな距離。
雨音だけが静かに二人を包む。
颯真は前を向いたままだが、耳の先が赤い。
心音はそっとその様子を横目で見て笑う。
心音(心の声)「無口なくせに……優しい。……ずるいよ、ほんと」
ト書き
颯真は傘を持つ指先をきゅっと握りしめる。
心音の頬が少し赤くなる。
ト書き
小ぢんまりとした部室。
壁際の棚には文学全集、文庫本、過去の文集がぎっしり並んでいる。
机を囲む数名の部員たちに文芸部部長の美月がプリントされた小説の原稿を配っている。
心音は少し緊張した面持ちで椅子に座り、視線は自然と奥の席へ──
颯真、美月から受け取った原稿を読み始める。
横顔は、真剣で近寄りがたいほど綺麗だった。
部長・美月「今日から入部した有坂さんです!みんな仲良くね」
心音(緊張しながら立ち上がり、お辞儀をする)「有坂心音です。よろしくお願いします!」
部長・美月「じゃあ早速だけど、新入部員の有坂さんに意見を聞こうかな」
ト書き
美月がやわらかな笑みで小説の原稿のプリントを差し出す。
心音は「ありがとうございます」と受け取りながら座り、ページをめくる。
心音、読むほどに眉が寄っていく。
奥の席で、颯真は静かに心音を観察している。
心音「……テーマは素敵なんですけど、主人公の行動が少し受け身すぎる気がします」
ト書き
空気がざわっと揺れる。
部員たち(小声)「おお……」「新人なのにハッキリ言うな」「可愛い顔して結構ズバッと行くタイプ?」
ト書き
颯真が原稿を軽く持ち上げ、心音へ視線を向ける。
その瞳は静かで、しかし刃物のように鋭い。
颯真(落ち着いた口調で断言するように)「物語は状況で動く。主人公が全部動いたら、説得力がなくなる」
ト書き
心音は少し頬を赤くしながらも、視線は真剣なまま颯真に向ける。
心音「でも……読者は主人公に感情移入します。その主人公の気持ちが動かないと、読んでいて苦しくなると思います」
ト書き
颯真の瞳がほんの一瞬、揺れる。
心音(心の声)「神宮寺君って、作品のことになると、ものすごく真剣になるんだ」
颯真「……感情だけで話を動かすのは、安易だ」
心音「安易かどうかは……書き方次第です」
ト書き
部屋の空気がピンと張り詰める。
だが、二人とも声を荒げていない。
美月は苦笑しながらも、どこか嬉しそうにしている。
颯真(心の声)「……言い返してくる。普通は流すところを、真正面から」
ト書き
部室は静まり返り、部員全員が二人のやり取りを見守っていた。
まるで、二人だけで空気を作っているような緊張感。
颯真は少しだけ息をつき、原稿を閉じる。
心音もふっと肩の力を抜く。
柱:同・部活終了後
ト書き
部員が次々と帰っていき、部室には心音と颯真だけが残る。
心音は帰る支度をしながら、そっと颯真の様子を見る。
彼は机を拭いているが、どこか落ち着かない様子。
颯真「……あの、有坂さん。さっきの意見。否定していたわけじゃないんだ」
ト書き
心音は一瞬驚き、すぐにふわっと笑った。
心音「ううん。ちゃんと言い合えるの、いいなって思ったよ。神宮寺君が本気で考えてるって、わかるから」
ト書き
颯真の手が止まり、少し顔が赤くなる。
颯真(心の声)「そんなふうに言われたの、初めてだ……」
柱:昇降口・同日夕方・雨
ト書き
心音が昇降口を出ようとすると、空が急に暗くなり、雨がざあっと降り始める。
心音は慌ててバッグを探る。
心音「……うそ、忘れてる。今日に限って……」
ト書き
焦った顔で立ち尽くす心音。
颯真がその横を静かに通り過ぎる。
──と思った瞬間。
彼はピタリと足を止めた。
傘が開く音が響く。
颯真は無言のまま、心音の頭上に傘を差し出す。
颯真「……入れ。濡れる」
ト書き
心音は一瞬息を呑む。
心音「ありがとう……」
ト書き
二人並んで歩きだす。
傘の下にある二人の肩が触れそうな距離。
雨音だけが静かに二人を包む。
颯真は前を向いたままだが、耳の先が赤い。
心音はそっとその様子を横目で見て笑う。
心音(心の声)「無口なくせに……優しい。……ずるいよ、ほんと」
ト書き
颯真は傘を持つ指先をきゅっと握りしめる。
心音の頬が少し赤くなる。



