柱:教室・朝
ト書き
春の光が差し込む、明るい教室。
ガヤガヤとした声が飛び交い、ざわつく空気の中──扉が静かに開く。
緊張と期待を混ぜた微笑みを浮かべ、有坂心音が一歩踏み入れる。
窓際では、黒髪の男子・神宮寺颯真が一人、文庫本を開いたまま微動だにしない。
担任「今日からこのクラスに入ることになった有坂心音さんだ。みんな仲よくしてやってくれ」
ト書き
心音はきちんと姿勢を正し、丁寧にお辞儀する。
その動きに、クラス中の視線が集まる。
心音「有坂心音です。よろしくお願いします!」
ト書き
明るい声に教室が一瞬ふわっと和む。
「明るいね」「かわいい子来た」と小声が上がるが──
窓際の颯真だけは、まるで別世界の住人のように本から顔を上げない。
ページをめくる指先が、静かに淡々と動いているだけ。
心音は案内された席へ向かう。そこは颯真の隣だった。
柱:同・午前・授業の休み時間
ト書き
心音、近くの席の女子たちと笑顔で打ち解けている。
しかし、ふと気になって視線を隣の席にずらす。
窓際の席で、颯真は文庫本へ視線を落とし続けていた。
姿勢も表情も乱れない。
心音(心の声)「……すごい集中力。ずっとあのまま?話しかけたら邪魔かな……いや、でも隣の席だし、挨拶くらいは……うう、どうしよう」
ト書き
悩んだ末、心音は勇気を振り絞って立ち上がる。
心臓がバクバクと鼓動を打つ。
颯真の前に立つと、彼の指がぴたりと止まった。
ゆっくり、颯真の視線が上がり、目が合う。
心音「あの、神宮寺君……隣の席の、有坂です。よろしくね」
ト書き
颯真は一度まばたきをする。
彼女を静かに、まっすぐ見た。
距離を測るような、慎重な瞳。
颯真(短く、淡々と)「……ああ」
心音(心の声)「そっけない……けど、無視はしないんだ」
ト書き
心音は小さく笑う。
心音「読書、好きなんだね……」
ト書き
颯真は本の背表紙を指で軽くトントンと叩く。
それから、少しだけ視線を窓へそらす。
颯真「……文芸部だから」
心音(少し驚いたように)「え!そうなの!?私、前の学校でも文芸部だったから、こっちの学校でも入ろうと思っていたの!」
ト書き
颯真、再び視線を本へ戻す。
颯真「……そうなんだ」
ト書き
チャイムが鳴り、心音が席へ戻るために歩き出す──
その瞬間、颯真は一瞬だけ横目で彼女の背中を追った。
誰も気づかない、ごくわずかな仕草。
柱:放課後・下駄箱前
ト書き
初日の緊張がようやくほどけ、心音は靴を履き替えながら息をつく。
心音(心の声)「神宮寺君、無口だったけど……話すと優しい感じもあったな。……いや、優しいって言えるほど話してないけど……なんか、不思議な人」
ト書き
その時、廊下に静かな足音。
振り返ると、颯真が無言で歩いてくる。
心音の横を通り過ぎる直前──ふっと顎を引き、わずかに会釈した。
心音「あ、また明日ね」
ト書き
颯真は一瞬、驚いたように目を丸くする。
すぐに視線をそらす。
颯真「……ああ」
ト書き
心音、自然と笑顔になる。
心音(心の声)「なんだろう……この感じ。ぎこちないのに、悪い気は全然しない。むしろ──もっと話してみたいかも」
ト書き
春の光が差し込む、明るい教室。
ガヤガヤとした声が飛び交い、ざわつく空気の中──扉が静かに開く。
緊張と期待を混ぜた微笑みを浮かべ、有坂心音が一歩踏み入れる。
窓際では、黒髪の男子・神宮寺颯真が一人、文庫本を開いたまま微動だにしない。
担任「今日からこのクラスに入ることになった有坂心音さんだ。みんな仲よくしてやってくれ」
ト書き
心音はきちんと姿勢を正し、丁寧にお辞儀する。
その動きに、クラス中の視線が集まる。
心音「有坂心音です。よろしくお願いします!」
ト書き
明るい声に教室が一瞬ふわっと和む。
「明るいね」「かわいい子来た」と小声が上がるが──
窓際の颯真だけは、まるで別世界の住人のように本から顔を上げない。
ページをめくる指先が、静かに淡々と動いているだけ。
心音は案内された席へ向かう。そこは颯真の隣だった。
柱:同・午前・授業の休み時間
ト書き
心音、近くの席の女子たちと笑顔で打ち解けている。
しかし、ふと気になって視線を隣の席にずらす。
窓際の席で、颯真は文庫本へ視線を落とし続けていた。
姿勢も表情も乱れない。
心音(心の声)「……すごい集中力。ずっとあのまま?話しかけたら邪魔かな……いや、でも隣の席だし、挨拶くらいは……うう、どうしよう」
ト書き
悩んだ末、心音は勇気を振り絞って立ち上がる。
心臓がバクバクと鼓動を打つ。
颯真の前に立つと、彼の指がぴたりと止まった。
ゆっくり、颯真の視線が上がり、目が合う。
心音「あの、神宮寺君……隣の席の、有坂です。よろしくね」
ト書き
颯真は一度まばたきをする。
彼女を静かに、まっすぐ見た。
距離を測るような、慎重な瞳。
颯真(短く、淡々と)「……ああ」
心音(心の声)「そっけない……けど、無視はしないんだ」
ト書き
心音は小さく笑う。
心音「読書、好きなんだね……」
ト書き
颯真は本の背表紙を指で軽くトントンと叩く。
それから、少しだけ視線を窓へそらす。
颯真「……文芸部だから」
心音(少し驚いたように)「え!そうなの!?私、前の学校でも文芸部だったから、こっちの学校でも入ろうと思っていたの!」
ト書き
颯真、再び視線を本へ戻す。
颯真「……そうなんだ」
ト書き
チャイムが鳴り、心音が席へ戻るために歩き出す──
その瞬間、颯真は一瞬だけ横目で彼女の背中を追った。
誰も気づかない、ごくわずかな仕草。
柱:放課後・下駄箱前
ト書き
初日の緊張がようやくほどけ、心音は靴を履き替えながら息をつく。
心音(心の声)「神宮寺君、無口だったけど……話すと優しい感じもあったな。……いや、優しいって言えるほど話してないけど……なんか、不思議な人」
ト書き
その時、廊下に静かな足音。
振り返ると、颯真が無言で歩いてくる。
心音の横を通り過ぎる直前──ふっと顎を引き、わずかに会釈した。
心音「あ、また明日ね」
ト書き
颯真は一瞬、驚いたように目を丸くする。
すぐに視線をそらす。
颯真「……ああ」
ト書き
心音、自然と笑顔になる。
心音(心の声)「なんだろう……この感じ。ぎこちないのに、悪い気は全然しない。むしろ──もっと話してみたいかも」



