借金令嬢は異世界でカフェを開きます

「叔父様は仕事で、しばらく王都を留守にするんです。それで私が代わりに」

 そもそも大の男が独身の女性についているわけにもいきませんしねと、キャロルは可愛らしく、ふふっと笑う。
 あの時彼はそのことを伝えに来ていたのかもしれないと思い、グレースは寂しく思いながら微笑んだ。

「帰っていらしたら、たくさん謝らないといけませんね」
「え、どうして謝るんですか?」
「ご迷惑をおかけしましたから」

 当たり前のことを言ったつもりが、キャロルはそれでなくても大きな目をさらに見開いた。目がこぼれないか心配になるほどだ。

「むしろそこは、ニッコリ笑ってありがとうと言ったほうが喜ぶと思いますわ」

 そりゃあ、キャロルのような十五歳の美少女だったらそうだろう。

 曖昧に微笑むグレースの側にキャロルは椅子を持ってくると、そこに座ってズイッと身を乗り出した。

「レディ・グレース?」
「はい」
「恋人はいらっしゃるの? もしくは結婚を約束されてる方とか」

 予想外の質問に、今度はグレースが目を見開く番だ。

「いえ、まさか。いません」
「そう? よかったぁ」

 語尾にハートがつくように弾むキャロルの声。突然どうしたというのだろう?

「それじゃあ、金髪はお好き?」
「特に好きでも嫌いでもないです」
「じゃあじゃあ、冷たくて怖~いアイスブルーの目なんてどう? 目つきが悪いせいで怖いお顔とか」

 アイスブルーの目で思い浮かぶのはオズワルドだが、彼の目は優しいし、綺麗で温かい。だからキャロルの言う人物が誰を指しているのかさっぱりわからず、グレースは首を傾げた。

「さあ、どうでしょう。見てみないことには何とも言えませんが、アイスブルーの目は綺麗だと思います」

 その答えにキャロルは「まあ」と頬を染めた。