目を見開き硬直するモリーの前で、オズワルドが、「あとで弁償します」とカウンターから清潔なナプキンを複数掴み、グレースの後頭部に押し当てた。見る見るうちに赤く染まっていくナプキンにモリーの血がいったん引き、一気に上昇した。
「あ、あいつらが、グレース様を突き飛ばしたんです! お嬢様に無理やりキスして叩かれたから!」
怒りが力になる。
「あたし、お医者様を呼んできます!」
「ダメよ、モリー。もうすぐ開店だから片づけをしないと」
「レディ・グレース。今日は休みなさい。店どころじゃないだろう」
オズワルドも説得するが、グレースはかたくなに首を振った。一日休めば売り上げが減るのを気にしてるのだと分かり、モリーはどうしていいか分からなくなる。心配しないでいいと言いたいのに、そうできない自分に唇をかむ。
(どうしてあたしは、こんなに役立たずなの)
悔しくて熱くなった目が、オズワルドのアイスブルーの目とぶつかった。
凍った湖のようなその目に、モリーの頭の芯がスッと冷えたような気がした。本能的に、この人は正しい命令を下せる人なのだと感じ、モリーは無言で指示を仰ぐ。
今グレースを任せられるのも自分を役立たずではない何かにできるのも、今はオズワルドしかいないのだと、なぜか確信に似た何かを感じた。
「モリー、君は医者を呼んできてくれ。開店はいつもより少し遅らせればいいだろう。扉の外にそう書いておく」
「はい! オズワルドさん、ありがとうございます!」
助け船にすかさず便乗したモリーは、グレースに何か言われないうちに医者を呼びに外へ飛び出した。
「あ、あいつらが、グレース様を突き飛ばしたんです! お嬢様に無理やりキスして叩かれたから!」
怒りが力になる。
「あたし、お医者様を呼んできます!」
「ダメよ、モリー。もうすぐ開店だから片づけをしないと」
「レディ・グレース。今日は休みなさい。店どころじゃないだろう」
オズワルドも説得するが、グレースはかたくなに首を振った。一日休めば売り上げが減るのを気にしてるのだと分かり、モリーはどうしていいか分からなくなる。心配しないでいいと言いたいのに、そうできない自分に唇をかむ。
(どうしてあたしは、こんなに役立たずなの)
悔しくて熱くなった目が、オズワルドのアイスブルーの目とぶつかった。
凍った湖のようなその目に、モリーの頭の芯がスッと冷えたような気がした。本能的に、この人は正しい命令を下せる人なのだと感じ、モリーは無言で指示を仰ぐ。
今グレースを任せられるのも自分を役立たずではない何かにできるのも、今はオズワルドしかいないのだと、なぜか確信に似た何かを感じた。
「モリー、君は医者を呼んできてくれ。開店はいつもより少し遅らせればいいだろう。扉の外にそう書いておく」
「はい! オズワルドさん、ありがとうございます!」
助け船にすかさず便乗したモリーは、グレースに何か言われないうちに医者を呼びに外へ飛び出した。



