社交界デビューが近づくにつれ、体調不良を訴えることが多くなったキャロルを心配したエミリアは、世間話としてグレースに相談したことがあるという。彼女が以前、昔身体が弱かったと話していたからだそうだ。

 その後何があったのか詳しくは教えてくれなかったが、キャロルは半年ほどで驚くほど元気になった。姿勢も良くなったし、朗らかな笑顔をよく見せるようになった。そのことで、姉はグレースにとても感謝している。

 そのせいか。オズワルドが仄かに彼女に想いを寄せ始めたことにもすぐに気づき、度々(たびたび)こうしてからかいの種にしてくるようになった。
 はっきり言って、非常にめんどくさい。


「なあ、オズワルド。まだ告白はしないのか?」

 なぜか真面目な顔になり、姉は何度目かの同じ質問を繰り返す。

「しませんよ。彼女にとって僕は、父親みたいなものですよ」

 自分がまわりから相当年上に見られていることは知っている。グレースが今日のように二人での食事に応じてくれたのも、オズワルドを亡くなった父親に重ねて安心しているからだろう。これが他の男なら即引き離すところだ。
 我ながら身勝手だとは思うが、そんなオズワルドの前でエミリアは不思議そうな顔をした。

「父親ねぇ。おまえのその色付き眼鏡をやめて髪を整えればいいじゃないか? 年だって七つしか離れてないんだから、さすがに父親は無理があるだろう」

 無邪気に首を傾げられてイラッとする。