そんな国民たちの喧騒をよそに、
フィリップは立太子に向けた準備を
着々と進めていた。
そして戴冠式の日の夜明け。
城のバルコニーに立つフィリップは、
まだ見ぬ彼の未来――ミレーヌを思い浮かべる。
「君と出会って、俺は初めて“自分の理想”を言葉にできた。君となら、どんな時代でも歩いていける。」

空が白み始め、
新しい陽光がハイドランジアの空を照らす。
遠く離れたウィステリアの街では、
ミレーヌは机に向かい、
新しい記事の冒頭を書き出していた。
“――変革は、いつも誰かの信念から始まる。”
彼女がジャーナリストとして執筆する最後の記事だ。

1週間後、
ミレーヌはウィステリア王国を離れ、
フィリップの待つハイドランジア帝国へと旅立つ。

フィリップとミレーヌの物語は
これから始まるのである。