でもフィリップは
それがすんなりと受け入れられた。
ミレーヌへの思いは
今まで付き合ってきた女性とは違う。
顔が美しいかとか、
王子に相応しい身分の女性かとか、
そんなものではなく、
心と心で繋がりたいと素直にそう思えたのだ。

フィリップがそう思えるようになったのは
今までの旅で様々な人と出会い、
人間的に成長したからに他ならない。

結局、
その日はミレーヌから色良い返事をもらえなかったが、
フィリップは諦めなかった。

筆を持ち、
群衆の声を記録するミレーヌ。
街なかで彼女を見かけるたびに
フィリップは声をかけたが、
彼女は背を向けるだけだった。
それでも彼は彼女に会い続けた。

何度も彼女のもとを訪れ、
記者として働く貧民街の取材を手伝い、
時には瓦礫を運び、
子どもたちに文字を教えた。

「王族が泥を踏むなんて、滑稽ね。」
皮肉めいた彼女の言葉を、
フィリップは涼しい顔で受け止める。
「滑稽でもいい。君の見る世界を、俺も見たい。」

突き返しても突き返しても、
自分に向かってくるフィリップに、
ミレーヌは反発しながらも、
彼の誠実さに少しずつ心を揺らしていく。