「ちなみにお菓子作ったんだけど
食べたい人〜?」
ニコニコの笑顔で歌のお兄さんのような声を出す冬也につられてみると。
確かに奥から香ってくる、美味しそうな匂い。
それは私の大好きなクッキーの匂いで、ちょうどお腹が空いていた私には不可抗力。
「……はい…」
「はぁいい子〜」
早く入りな、と手を引かれて家に入ると冬也によって扉が閉められる。
大人しくローファーを脱いだ隙に、ひょい、とそのまま冬也は何故か私を担ぎ上げた。
急展開ではあるが、冬也はまたに「ごめんごめん、運びたくなった」とか言って急に抱き上げられることがあってすっかりと耐性が付いてしまっている。
私は今日、禁煙の条件について聞きに来た。絶対にお菓子を食べたあとに冬也に聞く。
そう心でぐっと決めて、今は大人しく運ばれることにした。



