いつもの顔に戻って「笑った顔ぐらい見たことあるでしょ」という姿は不思議と知らない人みたいだった。
確かに笑った顔は見たことあるけど、さっきのは少し違うというか。
ガタン、と隣の椅子が引かれてそこに神崎くんが座る。
「すみません、遅れてしまって」
さっきとはまた違う申し訳なさそうな顔で言った神崎くんの言葉に静かに頷くと、ペラッとページを戻して日誌に神崎柊(かんざき しゅう)と名前を書いた。
その隙にチラッと神崎くんの胸元についているブローチに目がいく。
学校の紋章の形をしているブローチは学年によって色が異なっていて、私は青色、神崎くんは赤色が綺麗に輝いている。
そういえば、冬也のブローチも赤色だった。
「……ね、上の空過ぎません?」
「そうかな?ついさっきまで半分寝てたからかも」



