あぁ、ダメだ。図書委員は私一人しかいないから私が寝たら大変なことになっちゃう……。でもこれだよね、眠気に逆らえないって言うのは……。
少しずつ視界が暗く濁ってきている。
もう今、目を閉じる、さよなら世界。
「……八尋叶葉?」
「──ひゃ、は!!」
突然、すぐ近くで男の子の声がした。
これはもう思考よりも瞬発力の勝利。
さっきまでの睡魔ちゃんが嘘みたいに飛んで行って目がぱっちりとあく。そのまま無意識に声のする方を振り返った。
しばらくぼんやりとした視界が揺れて、はっきりとピントが合うと同時に神崎くんの姿が目に入った。
神崎くんは椅子に座る私のすぐ後ろにいて、私の頭の上から覗き込むようにして見ている。
どうしても上目遣いになってしまう私と、目を伏せるようにして下を見る神崎くん。
まつ毛の影が下りていて色気が爆発してしまっている神崎くんに戸惑いが隠せない。



