小さな恋の物語【短編集】


 今日は、ダンス&ボーカルグループオーディション番組の最終審査結果発表日。


 ドキドキしながらテレビに釘付けになるわたしの横に、幼馴染兼最近付き合いはじめたばかりのハツカレ、愛斗がピッタリくっついてくる。


「ちょ……愛斗(まなと)、集中できないんだけど」

里依(りい)が浮気しないように見張ってんの」

「別に、浮気なんてするわけないし」


 だって、物心ついたときには、すでに愛斗のことが好きだったんだから。

 好きじゃなかったときのことなんて、覚えていないくらい。


「でも、このメンバーの中に推しはいるんでしょ?」

 愛斗がちょっとだけ拗ねたような顔をする。

「い、いるけど……それはそれ、これはこれに決まってるじゃん。ほらっ、結果発表始まるから静かにして」

 胸の前で両手を組み合わせ、一言も聞き漏らすまいと聞き耳を立てる。


 結果発表が終わり、名前を呼ばれた人も、呼ばれなかった人も、みんなボロボロ泣いている。

「うぅっ……もう、みんな合格でいいのに。どうして不合格なんているんだろ。KAZUMAもYURIもみんなみんな超カッコいいのに……もう見られないなんて、信じらんない」

 堪えきれず、わたしももらい泣き。


「俺がいるじゃん」

「知ってるよ、そんなこと」

「ねえ、なんか言うことないの?」

 愛斗が、涙でぐちゃぐちゃなわたしの顔を覗き込んでくる。


「……愛斗が努力してる姿、ずっと見てた。だから、愛斗は絶対合格できるって信じてたよ。本当におめでとう、愛斗。これからも、ずっとずっと応援してるね」


 テレビ画面には、泣きながら仲間と抱き合うMANATOの姿が大きく映し出され、テレビのこちら側には、私のことをぎゅっと抱きしめる愛斗がいる。


「ありがとう、里依。俺、里依の推しになれるようにがんばるから」


 ごめんね、愛斗。

 その願いは叶えてあげられそうもないよ。

 だって愛斗は、わたしの大好きな人だから。