私と彼と彼のアンドロイド

「素敵なところを知ってるのね……ここを選んだのは光稀さん?」
「そうだよ。君が喜ぶなら僕はなんでもするよ」
 にっこりとセカンドが笑い、音緒の胸は少し切なく痛んだ。

「ありがとう。結婚指輪、光稀さんから借りたの?」
 指摘すると、彼の眉がぴくっと動いた。焦ったように見えたのは気のせいだろうか。
「今日は夫として振舞うように言われているんだ。だから安心して甘えてほしい」
 セカンドは今日も優しくて、音緒はだから、余計に切なくなった。

***

 光稀はドキドキしていた。
 今のところ、光稀であることはバレていない。すぐに光稀だと見破ってほしかった気持ちもあって複雑だが、作戦としては成功だ。
 指輪を指摘されたときには焦った。これは彼女との結婚の証であり、自分の複製とはいえセカンドにはめさせたくはない。

 セカンドならどんな口説き文句を言うのか。とにかく褒めまくっていたようだからそうするべきだろうが、かわいいとかきれいとか、ありきたりな言葉を避けようとするとなにも頭に浮かばない。

 悩めば悩むほど空白が生まれて順調に食事だけが進んでいく。
 研究所に仕事に行くと言ったのが嘘だとばれたことの弁明もまだしていない。
 あれは、だけど説明する必要を感じない。言えば音緒は気を使うだろうから言いたくない。

「苺のティラミスでございます」
 店員の声で光稀ははっとした。なにもうまく進められないまま、もうドルチェが提供されている。

 白い皿の上、高い足のグラスに白いティラミスが載っていた。スライスされた苺が花のように飾られ、ふんわり添えられたクリームに苺ソースがかかっている。
 チャンスだ、と思ってそれを口にした。甘酸っぱいソースと甘いクリームがからみあって、甘すぎなくて美味しい。