私と彼と彼のアンドロイド


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 音緒が光稀にタクシーで連れていかれたのは、隣の駅前にあるホテルのレストランだった。
 高級感の漂う絨毯と白い壁を抜けて入口をくぐる。
 ぴかぴかに磨かれた上品なカウンターがあり、黒いベストの男性がにこやかに立っていた。

 セカンドを装った光稀は彼に話しかける。
「予約の秋地ですが」
「秋地さま、ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」

 男性が案内してくれたのは窓際の席だった。天井までの大きな窓は曇りひとつなく、日の長くなった今は街に沈む太陽がオレンジの光をなげかけている。隣の席からは充分に離れている上に観葉植物で囲われていて、まるで個室だ。

 向かい合って座り、メニューを開く。
「食前酒は軽めのもので、飲み物はノンアルコールのワインにしよう。いい?」
「いいよ」

「お肉が好きだよね。コースでもいいし、アラカルトでもいいし、好きにしてね」
「ありがとう」
 山の幸コースを選んで伝えると、彼は給仕にそれを注文した。

 食前酒は桃のスパークリングワインだった。甘味の中にあるほんのりした酸味と炭酸の刺激が心地よい。一緒に提供されたアミューズはアミューズスプーンに乗っていてかわいい。

 前菜(アンティパスト)は宝石箱を模した黒い箱に入って出て来た。蓋をぱかっと開けると白い皿の上に宝石のようなゼリー寄せが乗っている。