私と彼と彼のアンドロイド

「好きって言ってもらえなかった……」
 セカンドはあれだけ愛情表現をくれるが、きっとバグかなにかだろう。不良品だとも言っていたから、きっとそうだ。
 どうしてホテルにいたのかも教えてもらえなかった。ますます浮気の線が濃厚だ。

 寝る前にトイレに行き、部屋に帰ろうとしたときだった。
 光稀の部屋の扉が開いていて、話し声が聞こえて来る。

「……愛してる」
 聞こえた言葉に、音緒は息を飲んだ。そっと覗くと、イヤホンをしてパソコンに向かう光稀がいた。パソコンの向こうにいる誰かの姿は見えない。
 音緒は足音を忍ばせてその場を去り、自室に戻ったらベッドに飛び込む。

「相手は誰なの? どうして……」
 音緒は枕に顔をうずめた。
 どれほど我慢しようとも嗚咽がもれてしまい、泣き声を抑えるのに苦労した。
 翌朝、起きて階下に降りると光稀はおらず、出かけてくる、というメモが残されていた。

「光稀さん、ずるい。自分は行き先を言わないじゃない」
 恨み言はため息と一緒にこぼれて落ちる。

 だけどいなくて良かった。真っ赤に腫れた目を見られずにすむから。
 朝早くから会いに行くのは、愛していると言っていた相手だろう。
 彼とは恋愛をして結婚したわけではない。ずっと自分の片思いだ。

 彼にほかに好きな人がいるなら、身を引かないと。大人ならきっとそうする。きちんと話し合って、別れを決めるのだろう。
 だけど。

「無理だよ、そんなの」
 ずっと好きだった。彼だけを見て生きてきた。
 ぽろぽろとこぼれる雫に、音緒は顔を両手で覆った。