私と彼と彼のアンドロイド

「セカ……光稀さん、そんなことっ」
「はは、仲が良さそうで良かったよ。って、あれ?」
 笑いをこぼした祥吾が不意に真顔に戻る。

「今日って、駅前のグランドホテルで人と会うって言ってなかったっけ?」
「え?」
 音緒は驚いて聞き返す。

「その件は終わった。邪魔すんなよ。甥っ子が待ってるぞ」
「そうだな、またな!」
 祥吾は爽快な笑顔を残して立ち去り、音緒は首を傾げてセカンドを見た。

「今日って仕事じゃないの? 誰と会うの?」
「それは知らない。僕はセカンドだからね」
「そうね……」
 音緒は不安になってうつむく。

「音緒、あなたには僕がいるよ」
 甘くささやかれても、音緒の心は晴れない。
 研究所でしかできない仕事だと言っていたのに、どうしてだろう。
 しかも、場所がホテルだという。よくない予感しかない。

「帰ろう、セカンド」
「了解、音緒ちゃん」
 セカンドがタクシーを呼んでくれて、音緒は自宅に戻った。