私と彼と彼のアンドロイド

 お土産なんか買ったら外出がバレてしまう。
 ひとりで来たことにして買おうか。だけどその間セカンドをどうしていたのかと聞かれそうだ。

「セカンド、帰ろうか」
「もう?」

「光稀さんにおでかけがバレたくないの」
「仕方ないな……だけどあなたとの秘密ができるのは悪くない」
 頭を撫でられて、音緒は、またどきっとしてしまった。
 セカンドはアンドロイドなのに、やたらとこちらの心臓に悪いことをしてくる。本当に光稀の人格を模しているのだろうか。

「あれ? 光稀じゃん」
 声がしてそちらを向くと、見知らぬ男性がいた。光稀と同じ年頃に見えるから、研究所の人だろうか。

「音緒ちゃん。研究所の人だ。バレると厄介だから、僕が光稀本人だということにして」
「わかった」
 こそこそと話したあと、セカンドは彼に向き直る。

「祥吾、こんなところで珍しいな」
「甥っ子に水族館に連れてけってせがまれてさ。お前こそ……あ、デートか? そちらが噂の愛妻さん?」
 にやにや笑いをしながら言われ、ぺこりと頭を下げる。

「音緒です。初めまして」
「丘山祥吾です。以前はよく研究所に来てたんだってね。俺は途中入所だから知らなくてさ」

「父が所長で、ときどき遊びに行かせてもらってました」
「いやあ、かわいいなあ。こんなかわいい人が奥さんでうらやましい」

「祥吾に見せるのはもったいない」
 セカンドがむっとしたように自分を隠すので、音緒は少し慌てた。