私と彼と彼のアンドロイド

「初めてのデートもここだったね」
「そんなことまで知ってるの?」
「君のことはなんでも知ってるよ」

 耳に触れそうな距離でささやかれて、音緒は慌てて距離を取った。
 セカンドはふふっと笑って音緒と手を繋いで歩き出す。

 水族館の中のカフェでは音緒は期間限定の海をモチーフにしたパフェを頼み、セカンドはアイスコーヒーを頼んだ。とはいえセカンドは実際には飲食できないので、最後には音緒が飲むことになる。

 届いたパフェに音緒は目を輝かせた。無人島に見立てたアイスクリームの周囲には青いゼリー。そこにキウイ、パイナップルなどのフルーツがたっぷり載っていて、貝の形のクッキーに真珠を模したホワイトチョコ。その下にもクリームがたっぷり、底には再び青いゼリーが入っていて、見た目にさわやかだ。

「かわいい! 光稀さん、これ……」
 言いかけてはっとする。今一緒にいるのはセカンドだった。

「ごめん、間違えちゃった」
「僕は光稀の上位互換。光稀と間違えるくらいのこと、許すからね」
 上位互換という言い方に引っかかったが、音緒は追及しなかった。学習途中のAIだから、おかしな言い回しになることもあるのだろう。

「写真、撮ってあげるよ」
 言われてスマホを渡すと、カシャっと上手に撮ってくれた。
「写真が上手ね」
「あなたにほめられるのはなにより嬉しいよ」
 甘い眼差しで見つめられ、音緒の胸がどぎまぎと鳴る。

「いただきますっ」
 意識を逸らすようにパフェを食べるが、その最中もじっと見られていて落ち着かなかった。
 休憩を終えて再び水族館を見たあとは、お土産のショップを見て回る。
 光稀にはなにがいいかな、と思ってハッとした。