私と彼と彼のアンドロイド

「彼、かっこよくない? 声かけてみようかな」
「でも恋人と一緒じゃん」
「妹でしょ?」
 聞こえた声にショックを受けていると、セカンドが手をつないできた。
 見上げた彼はにこっと笑みを返してくれて、光稀に見守られているようでほっとした。

「やっぱ恋人じゃん」
「いいなー」
 女性たちの声に、少し得意になる。自慢の旦那さまが羨ましがられる存在なのは嬉しい。

 大水槽で泳ぐエイを見ていると、セカンドが言った。
「エイの先祖はサメなんだよ」
「全然形が違うのに」
「起源は一億五千万年ほどさかのぼる。ジュラ紀だね」
「恐竜がいた時代よね。すごい」
 セカンドは光稀よりも博識で、うんちくを語って楽しませてくれた。

 奥に進むにつれて、徐々に体が冷えて来る。エアコンに加えて水槽のせいで寒いようだ。外が暑いからと薄着で来たことを後悔していたら、ふわりと温かいものに包まれた。
 セカンドがジャケットを羽織らせてくれたのだ、と気が付いて彼を見ると、甘い微笑が降って来た。

「寒そうだったから」
「そしたらセカンドが寒くない?」
「僕はアンドロイドだから大丈夫。音緒ちゃんは優しいな」
 肩を抱き寄せられ、音緒の心臓がどきっと跳ねた。