私と彼と彼のアンドロイド

 音緒はしっかりメイクをしてセカンドと一緒に家を出た。
 初夏の眩しい日差しの下、音緒は半袖のワンピースを着ている。

「嬉しいな。音緒ちゃんからのリクエストでデートだなんて」
「れ、練習だからっ!」
 音緒はわずかに頬を染めてセカンドに答える。彼はサマージャケットを着ていて、いつもの光稀とは違う雰囲気だった。ひとことで言ってかっこいい。

「練習でもデートだよ。僕の選んだ服を着てくれるのも嬉しい」
 セカンドに服を選んでもらったのは、光稀の好みを知るためだ。光稀はいつでもなにを着ても「似合うよ、かわいい」ばかりを言うから、どれが本音なのかわからない。

「今日は光稀さんの考え方をたくさん教えてもらうから」
「了解。たっぷり教えてあげるよ」
 耳のそばでささやかれて、カーっと頬が熱くなる。光稀いつも一定の距離をとっていて、こんなことをしない。

 セカンドがネットを介して呼んでおいたタクシーに乗って水族館に行く。セカンドは財布を持っていないから、音緒がチケットを買って入場した。
 中に入るとひんやりしていた。

 土曜日だから人はそれなりに多く、カップルや家族づれなどでにぎわっていた。
 定番のデートスポットだし前にも光稀と来たことがあるが、音緒は緊張していた。
 セカンドは光稀であって光稀でないから、浮気のような気がしなくもない。
 その上、と並ぶ彼を見上げる。

 背の高い彼がおしゃれをしていると、やたらと人目を引く。眼鏡のせいかカジュアルスタイルでも知的で品がある。自分より年上の、彼と釣り合いが取れそうな女性たちが彼を見ていると、それだけで嫉妬が湧き立つ。