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残業中の光稀はパソコンの画面を見つめてため息をついた。
セカンドが暴走し過ぎだ。音緒に迫らないように微調整をしたはずのに。
彼が音緒を抱きしめているのを見たときには殴ろうかと思ってしまった。
「自分にやきもちを焼く日が来るとは……」
慌てたせいで回収を忘れて研究所に戻って来てしまった。居場所がわかったから心配はないが、と思ってからふと思う。頭に浮かぶのは、タブレットで彼女が読んでいたBLマンガだ。
「俺がセカンドといちゃいちゃしたら彼女は喜ぶのか……? いやいや、ないない!」
手を振って頭のもやもやを消し、またパソコンに向かう。
メールチェックをした光稀は、新着メールを見つけて開いた。
差出人は、『トレイシー・メリー・キルモント』となっていた。
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翌朝、音緒は光稀を見送るために玄関にいた。音緒の隣にはセカンドが微笑して立っている。
光稀は眉を下げて音緒を見た。
「ほんとごめん、急な仕事で。研究所でしかできなくって」
「大丈夫。土曜日なのに大変ね。行ってらっしゃい」
光稀は音緒の隣に立つセカンドを険しい目で見た。
「昨日みたいな余計なことするなよ。ちゃんと音緒の命令を聞くこと」
「了解、任せて」
「……不安だ」
「ごめんね、無理言って起動してもらって」
「掃除に使う程度なら大丈夫だと思うから」
光稀はそう言って音緒を見る。

