私と彼と彼のアンドロイド

「鍵、忘れたのかな」
「そうかも」

「社会人がこんな時間に帰宅っておかしくね?」
 大翔が言うと、

「病気で早退なのかな」
 希世がそう続けた。音緒は慌ててスマホをバッグにしまった。

「ごめん、すぐ帰る」
「気を付けて」
「またな」
 ふたりに見送られて音緒は慌てて帰った。

 家に着くと微笑を浮かべた光稀がいて、音緒は彼に駆け寄った。
「大丈夫? 早退したの?」
「いいえ。鍵を開けてもらえる?」

「ちょっと待ってね」
 バッグから出した鍵で玄関を開けて一緒に入る。
 直後に光稀は玄関の鍵を閉めて、音緒を抱きしめた。

「み、光稀さん!?」
「僕はセカンドだよ。あなたに会いたくて研究所を抜け出してきたんだ」

「は!?」
「あなたに会えない時間はとても苦しかった」
 耳元でささやかれ、音緒の背がぞくぞくっとした。
 まるで本当に彼にささやかれているかのようだ。こんな甘い言葉を彼がくれたことはなかったというのに。

「あなたがここにいるの、光稀さんは知っているの?」
「どうだろうね」
 彼はいたずらっぽく微笑む。