私と彼と彼のアンドロイド

 アメリカの研究所から誘いがあったからそれに乗って、異国でこのまま彼女を忘れようと思った。客員研究員の契約期間が終わったらタカナワロボット研究所へ就職をと誘われてもいたが、断ろうと思って所長に国際電話をした。
 だが、思いがけず「娘と結婚しないか」と言われて驚いた。

「結婚ですか!?」
「君ももういい年だろう。親ばかと言われるだろうが、かわいい娘を見知らぬ馬の骨にくれてやる気はない。大学で悪い虫が付く前に結婚してやってくれないか」

 悪い虫、と言われた瞬間に頭が沸騰した。彼女がひどい目に遭うなんて、絶対に許せない。自分と結婚していれば、それが防波堤になって男は寄り付かないはずだ。
 彼女に好きな人ができたら、この目で確かめてやる。彼女を幸せにできる男が現れたら、ちゃんと別れよう。
 だからそれまでは。

「ぜひお願いします!」
 結婚が決まってからは大忙しだった。
 アメリカで研究しながらネットで住みやすい物件を探し、日本の不動産会社と連絡をとり、彼女が受かった大学とタカナワロボット研究所の間で住居を探した。

 ネット越しにできる調査はやり尽くした。近辺のマップ写真はなんども確認し、治安を調べた。ほかにも美味しいお店があるか、スーパーの値段は、などなど。
 そうして程よい二階建ての一軒家を見つけて購入、婚約指輪も結婚指輪も女性で人気の店をネットで調べ、家財道具も最新のものを買った。

 ようやく再会できたとき、記憶よりも大人になっている彼女に驚いた。
 彼女を汚してはいけない。その一心で線を引いて彼女に接して来た。

 光稀はいつも、独占欲と理性のはざまで揺れ動いている。
 もし彼女の心を射止めることができたら、どれだけ幸せだろうか。見守るなんて言わずに、彼女に近付く努力をしてもいいのだろうか。
 家に到着して車を車庫に入れると、玄関で深呼吸して鍵を開けて中に入る。